まさかの”粘土の硬貨”!?戦時下の物資不足で日本の貨幣の素材は驚くほどコロコロ変わっていた:2ページ目
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錫(すず)から粘土まで
そこで、アルミニウムにかわる少額貨幣の原料として注目されたのが錫(すず)でした。
もともと錫はハンダにも使われたように柔らかく、硬貨の原材料には適していません。
しかし日本の占領下にあったインドシナ地域、とりわけマレー半島は世界的な錫の産地だったので、1944(昭和19)年には錫製の10銭硬貨と1銭硬貨が発行されたのです。
ところが戦局がさらに悪化すると、マレー半島から錫を輸送することさえ難しくなりました。
そしてついに硬貨の原材料がなくなり、粘土を原材料とする硬貨(10銭・5銭・1銭)の試作まで行われたのです。
しかし、その製造が開始されたころに終戦となったため発行されませんでした。
以上のように、身近な少額貨幣の原材料は、戦線の拡大と戦局の悪化にともなって、銅を主体とした青銅、アルミニウム、錫というように変化していったのです。
この変遷を見ていくだけでも、当時の物資不足の状況がひしひしと感じられて恐ろしいですね。
参考資料:執筆・監修阿部泉『明日話したくなるお金の歴史』清水書院、2020年
画像:photoAC,Wikipedia
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