清少納言の恋人(?)藤原実方、なのに「枕草子」では恋人として登場しない理由…【光る君へ】:3ページ目
「枕草子」ではなぜ親しい様子が描かれなかったのか
実際に恋人であったという実方は、なぜ「枕草子」の中で親しい人物として登場しなかったのか。これは憶測の域を出ず、私個人の考えですが、本当に恋人関係にある人物のことは表立って「枕草子」に登場させたくはなかったのではないでしょうか。
夫であったことが知られている橘則光が親しい人物として登場するのは仕方のないことですが、夫ともいえないような恋人であれば話は別。たとえば、以前紹介した斉信とのエピソードで、清少納言は「恋人になったら定子さまに表立ってあなたのことをほめることができなくなる」と言っています。清少納言はごくごく親しい人物にしか家の在りかを教えない人物でもあり、公私をきっちりわけて行動する人のように思えます。
「枕草子」で斉信や行成との疑似恋愛的なやりとりが描かれているのは、あくまでも仕事上のポーズであって、本当に私的な関係があった人のことは直接的に書かなかったのではないでしょうか。「枕草子」に見える清少納言像からは、そのように思えるのです。