この首級は男か女か?「高天神城の戦い」で徳川家康が伝授した見分け方とは【どうする家康】
中世の武士たちは、戦場における武功の証しとして、敵の首級を獲りました。
しかし首なら何でもいいという訳ではなく、身分の低い雑兵首を獲ってもあまり評価されません。
また一般に非力とされる女性や老人、子供の首など獲った日には、評価どころか侮蔑の対象とされる始末。
だから首級は、相応に身分のある男性のものでなくてはなりませんでした。
一般に成人男性の頭部は約5キロほどあるため、持ち歩くのが困難な時は目印として鼻を削ぎ落し、首級そのものは戦闘後に回収していました。
この時も注意が必要で、ただ鼻だけでは男性か女性か区別がつかないため、必ず上唇まわりなどヒゲも一緒に削ぎ落とすのがセオリーです。皆さんも首級の鼻を削ぐときはご注意下さい。
さて、戦いが終わって論功行賞。名だたる敵の大将から、どこの馬の骨とも判らぬ者まで、ずらりと首級が勢ぞろいします。
……時は天正9年(1581年)3月22日、世に言う高天神城の戦いが終結。大将の栗田刑部丞(くりた ぎょうぶのじょう)や岡部元信(演:田中美央)をはじめ、何百という首級が並ぶ中、ひときわ目を惹くものがありました。
女性と見まごう美しい首級
……かくて明日の戦に城兵皆いさぎよく戦て討死す。殊さら茜きし武者は晴なる働して死しぬ。軍はてゝ後敵の首どもとりどり御覧に備へし内に。顔の様十六七ばかりと見ゆるが。薄化粧し歯くろめ髪なでつけ。男女いづれとも見分けがたきがあり。君その眼を明て見よ。眸子上に見返してまぶたの内に入り。白眼ばかり見えば女と知るべし。黒眼明らかにみえば男なれと宣へば。笄もて目を開き見るに眸子明らかなれば男の首に定む。後に聞ばこは刑部最愛の小性に時田鶴千代といふ者にて討死の様いと優にやさしかりとぞ。いづれも御明識に感服しけるとか。……
※『東照宮御実紀附録』巻三
年の頃は十六、七歳でしょうか。薄化粧にお歯黒をつけ、髪は美しく撫でつけられ、女性のようにも見える美しさです。
「これは男か?女か?」
「首から下がないから、何ともわからんな……」