13歳で初めて決闘を制してから、29歳まで60数度の勝負に一度として不覚をとったことがなかった剣豪・宮本武蔵(みやもと むさし)。
剣豪の代表的存在として現代でもファンの多い武蔵ですが、彼の生涯について書かれた伝記『二天記』を読むと、ちょっと微妙な記述が出てきました。
武蔵が江戸に滞在していた時、夢想権之助(むそう ごんのすけ)なる男が現れたのです。
「一打ニ撃タハ」されたのは武蔵か?それとも権之助か?
一 武蔵江府ニ在シ時夢相権之助ト云者来リ勝負ヲ望ム権之助ハ木刀ヲ携フ武蔵折節楊弓ノ細工有シカ直ニ割木ヲ以テ立向フ権之助會訳モナク打テ駆ル武蔵一打ニ撃タハス依テ閉口シテ去
※豊田景英『二天記』より
武蔵江府ニ在シ時夢相権之助ト云者来リ勝負ヲ望ム
【意訳】武蔵が江戸に滞在していた時、夢相(原文ママ)権之助という者がやって来て木刀の勝負を挑んできた。
権之助ハ木刀ヲ携フ武蔵折節楊弓ノ細工有シカ直ニ割木ヲ以テ立向フ
【意訳】武蔵は楊弓の細工をしていたが、木刀を持っておらず、そこらへんの手ごろな棒切れを手にとって立ち会う。