無敗伝説、破れたり?剣豪・宮本武蔵が夢想権之助(むそうごんのすけ)なる男に挑まれた勝負がコチラ:2ページ目
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権之助會訳モナク打テ駆ル
【意訳】すると権之助は礼(会釈)もなく、いきなり斬りかかってきた……。
以降原文で「武蔵一打ニ撃タハス依テ閉口シテ去」とありますが、この表現はどう解釈すべきでしょうか。
一つは「権之助が武蔵『を』一打ちに撃たはす(倒す)。これにより、武蔵は閉口して去った」と解釈できそうです。
この場合、武蔵は「いきなり打ちかかってきて、一本取ったとはしゃいでおる。無礼なヤツだ。こんなのはノーカウントだ!」とぼやいた(閉口した)のでしょうか。
確かに剣道でも残心がなかった場合、一本取り消しになるものの、剣豪としてはちょっと負け惜しみっぽいですね。
もう一つの解釈は「打ち駆けてきた権之助を、武蔵『が』一打ちに撃倒した。不意討ちが通じず、権之助は恥じ入りそそくさと逃げ出した」とでも言ったところでしょうか。
武蔵も「まったく、無礼者が……困ったもんだ」と閉口してその場を去ったようです。
これなら武蔵の無敗伝説にキズはつきませんね。『二天記』筆者としてはこっちの解釈で書いたものと思われます。
仮に武蔵が負けたのであれば、同書内において矛盾を指摘されるであろう無敗を強調しないでしょうし。
終わりに
果たしてこの勝負を制したのは、宮本武蔵か夢想権之助か。武蔵「を」打倒したのか、武蔵「が」討ち倒したのか。皆さんは、どっちだと思いますか?
なお権之助が後に開いた神道夢想流杖術の口伝では、一度は敗れた権之助がリベンジを果たしたそうです。
真相はどっちなのか、あえて両方に解釈できる玉虫色の表現にしたという可能性は……ありませんよね?
※参考文献:
- 豊田景英『二天記』国立公文書館デジタルアーカイブ
- 松井健二 編『天真正伝神道夢想流杖術』壮神社、1994年10月
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