「鎌倉殿の13人」大天狗に取り込まれ死神にそそのかされた義経…第19回「果たせぬ凱旋」振り返り:3ページ目
ここ一番で頼りになる「舅殿」北条時政(演:坂東彌十郎)
義経が逃亡した後、初の京都守護として御所へ上がった北条時政。
最初は「やだよ」「おっかねぇよ」なんて駄々をこねて、りく(演:宮沢りえ。牧の方)からお尻を叩かれていましたが、いざ本番では胆力を発揮して義時と父子の連係プレーを成功させます。
こういう辺りは、第1回「大いなる小競り合い」で逃亡中の頼朝をかくまい、強大な伊東祐親(演:浅野和之)に向かい合った時から変わらず魅力的ですね。
また逃亡生活に疲れ、和解に絶望した義経にかけた言葉がとても沁みました。
「あなたはおっしゃった。経験もないのに自信もなかったら何もできぬと。では自信をつけるには何がいるか。経験でござるよ。まだまだこれからじゃ」
第10回「根拠なき自信」で対佐竹のデビュー戦に臨んだ義経の言葉を、微笑ましく聞いていた情景が、昨日のように思い出されます。
まだ若いし知恵があるのだから、どこへ行ってもやり直せるし、きっと上手くやれる……もう鎌倉へは戻れず、奥州に戻るべきでもない義経に対する、これ以上ない激励でした。
あるいは「平家をぶっ潰す」ことしか考えていなかった亡き長男・北条宗時(演:片岡愛之助)の面影を義経に見出し、戦う相手=平家が滅んでも生きて欲しかったのかも知れませんね。
終わりに
義経「平家を滅ぼしたのはついこないだではないか。私の何がいけなかった」
……端的に言うなら「大天狗(法皇猊下)に取り込まれ、死神(叔父上)にそそのかされた」ことでしょうか。
いくら許したくても、越えてはいけない一線を越えてしまった以上、その先にあるのは命のやりとり。
たとえどんなに可愛い弟であろうと、自分を殺そうとした(追討の宣旨を求め、挙兵した)者を赦してしまっては、これまでに殺した者たちが浮かばれません。
頼朝「これより、全軍で京へ攻め上る」
この決意が、どれほど苦しいものであったか。義時評するところの「羨ましいほどにまっすぐ過ぎた」結果がこれです。
もし和解を望んでいたのなら、もう少し熟慮すべきでした。
さて、次週放送の第20回は「帰ってきた義経」……結局、義経は奥州に帰り藤原秀衡(演:田中泯)と再会。
恐らくは秀衡の死から義経の最期までを描くのでしょうが、ただ自害して終わりではないでしょう。
果たして三谷脚本はこのクライマックスをどのようにアレンジするのか、次週も目が離せませんね!
※参考文献:
- 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月
- 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月