勉強しすぎちゃダメ?戦国武将・高坂弾正が『甲陽軍鑑』に記した学問の心得とは:2ページ目
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もちろん、ひとかどの人物ともなれば文武両道でありたいものですが、それでも武をアイデンティティとする武士として、武功の数よりも読んだ本の冊数が多いようでは、さすがにいかがなものでしょうか。
まとめると「必要な知識を得るための勉強は最低限に留めて奉公に励み、人の上に立つような大将であっても、あくまで武士たる本分を忘れるな」と言ったところでしょう。
そう聞くと「ただ一冊読めばよいと言っても、悪書をつかんでしまったら間違った知識が身についてしまうではないか」という反論も出てきそうですが、一つのテーマについて多くの書籍が世にあふれ返っている現代とは異なり、書物自体が希少だった出版事情もあるようです。
終わりに
とかく学問とは奥が深く、知れば知るほど面白いものの、学ぶこと自体にハマり込んでしまうと、肝心の奉公が疎かになったり、知識のひけらかしが鼻についてしまったりといった弊害も考えられます。
だからこそ、必要なことを的確に学びとったら、それを実践して奉公に活かすことが大切であると共に、むしろ現場の数こそが何よりの学びとなることを、高坂弾正は肌で理解していたのでしょう。
※参考文献:
- 佐藤正英 校訂『甲陽軍鑑』ちくま学芸文庫、2013年8月
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