戦場で生まれた絆!奥州征伐で抜け駆けした鎌倉武士の縁談エピソード【中】:2ページ目
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殺された弟分・親光の仇を討つ
「おのれ……っ!」
できれば乱戦の中で距離を取りながら、遠巻きに射止めようと思っていた相手ですが、幼少時から弟分として可愛がっていた親光が討たれたとあっては、その仇を取らずにはおれません。
「てめぇ、よくも五郎を殺りやがったな!藤八だか忘八(※1)だか知らねぇが、その図体を八つ裂きにしてやるから覚悟しやがれ!」
(※1)ぼうはち。人間が重んじるべき八つの徳(仁義礼智忠信孝悌)をすべて忘れた人でなしの意。
「けっ、坂東の小兵輩(こひょうばら)めが、返り討ちにしてくれるわ!」
怒り狂っていながらも頭は妙に冴えきっており、白刃を抜き払った行光は、藤八の斬撃を巧みにかわしながらその懐まで入り込み、一撃でその首級を掻き落としました。
「見たかコノヤロウ……甲斐の住人・工藤小次郎行光!敵方の御大将・伴藤八を討ち取ったり!」
高々と伴藤八の首級を掲げると、敵は蜘蛛の子を散らす大混乱。すると、そろそろ疲れの見えた義村が「まずはこればかり掻き乱せば良かろう」と引き上げを号令する声が聞こえます。
とりあえず親光の仇も取れたことだし、この辺りが潮時であろうと行光も引き上げて行ったのでした。
※参考文献:
貴志正造 訳注『新版 全訳 吾妻鏡 第二巻 自巻第八 至巻十六』新人物往来社、2011年11月30日
細川重男『頼朝の武士団 将軍・御家人たちと本拠地・鎌倉』洋泉社、2012年8月20日
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