手洗いをしっかりしよう!Japaaan

功徳を積んだら地獄行き!?「我地獄に入らざれば…」禅を極めた趙州和尚の言葉が深い

功徳を積んだら地獄行き!?「我地獄に入らざれば…」禅を極めた趙州和尚の言葉が深い

功徳を積んで地獄に堕ちる!?趙州和尚の珍問答

そんな趙州和尚がある日、檀家からこう尋ねられました。

「和尚様のように功徳を積まれた方でしたら、きっと来世も人間に生まれて来られるんでしょうね」

檀家とすれば高僧として名高い趙州和尚をヨイショしておこうと思ったのかも知れませんが、和尚はそっけなく答えます。

「うんにゃ、わしの来世はロバか犬じゃろうな

檀家は内心「そう言いながら、本心はもっと持ち上げて欲しんだろうな」と思いながら続けます。

「またまたぁ~、そんなご謙遜を……ではそのまた来世は?」

檀家が再び尋ねると、趙州和尚はさも当然とばかりに答えます。

「……そのロバや犬のひり出した、屎(くそ)にたかる蛆虫(うじむし)じゃよ

いやいや、いくらなんでも謙遜が過ぎる……いささか辟易した檀家は、ちょっとムキになってきました。

「和尚様のように功徳を積まれた方がそんな境遇なら、私ども凡俗は一体どうなってしまうのですか!和尚様は亡くなったら、極楽浄土へいらっしゃるのでしょう?」

檀家の顔色などいっかな構わず、趙州和尚は鼻で笑って答えます。

「そんなもの、地獄行きに決まっておろうが」

功徳を積めば(地獄ではなく)極楽浄土に行けて、来世も(万物の霊長と信じる)人間に生まれて来られる……そんな期待に仏の教えを信じる檀家にとって、これほど絶望的な宣告はありません。

「そんなバカな!和尚様ほどの方が地獄に行くとしたら、私たちはいったい何を希望とすればよいのですか?!」

死後、自分が「極楽浄土に行けるか、地獄に堕とされるか」が現代とは比較にならないほど死活問題だった時代ですから、檀家の嘆き悲しみようは尋常ならざるものだった事でしょう。

ほぼ半狂乱にすがりつく檀家に、趙州和尚は微笑を湛(たた)えて答えました。

「……わしが地獄へ行かなんだら、誰がそなたを救うんじゃ」
【原文】我地獄に入らざれば誰か地獄に入らん

その静かな声と穏やかな表情に秘められた済度(さいど。仏が迷い苦しむ衆生を救うこと)の決意を感じ取った檀家は、たちまちにして悟ったとの事です。

3ページ目 地獄にこそ、仏は必要とされている

 

RELATED 関連する記事