もうひとつの時代祭。当日の午前中にひっそり行なわれる神幸列
「あんなの、ただのコスプレパレードだ」と揶揄する声がないこともない、時代祭。ですが、明治28年に行なわれた第1回目は、文字通り、歴史萌えなコスプレパレードでした。明治期の京都振興策として開催された『平安遷都1100年祭』の余興が、時代祭の発端。そう、余興です。最初は正に、純粋なるコスプレパレードだったわけです。
2回目以降は、行列の最後尾に平安神宮の祭神・桓武天皇の神幸列がつくようになります。後年には合祀された孝明天皇の神霊も加わり、二基の御鳳輦による神幸も開始。普通の神社の普通の祭の体裁が整いました。
が、普通の神社の普通の祭の場合「神輿が神社から出て、氏子区域を回り、還ってくる」のが常ですが、時代祭の行列には「還ってくる」ルートしか見当たりません。周知のように、時代祭のスタート地点は、京都御所。そこから平安神宮まで、「出先からホームへ帰る」だけであり、いわば還幸のみの行程。往路 or 神幸は、どうなったのかと。交通整理の負担を減らすため、省略でもされたのかと。
実は、時代祭でも神幸はちゃんと行なわれてます。それも当日の朝、パレードが始まる前の午前中に、ひっそりと。
22日の午前9時、桓武天皇と孝明天皇の神霊を乗せた二基の御鳳輦は、平安神宮を出発します。お供をするのは、総奉行、神饌講社、前列など。さすがに時代行列はついてきませんが、各時代の旗を持った人たちが連なり、行列の規模はそれなりに大きくなります。本宮応天門前には既に有料観覧席の椅子がセッティングされてますが、座る人はいません。
応天門を出た神幸列は、本番の時代行列とは違うルートで御所を目指します。沿道に見物人は、なし。通行止めもほとんど、なし。普通の日常が溢れる道を人力手押しの御鳳輦が進む姿は、結構シュールです。
1時間ほどかけて御所へ辿りついた行列は、数時間後には人だらけになる堺町御門をくぐって、中へ。建礼門前、すなわち時代行列のスタート地点に設営された行在所へ御鳳輦を安置します。行在所祭が行われ、白川女による献花奉仕が行われたのち、しばしここで出発を待つわけです。周辺では、時代行列に参加する市民が、装束の支度&休憩中。公卿や武士や馬などと、近所の人の犬の散歩が入り混じるここの光景は、やはり結構シュールです。
他の祭の神幸列にある熱狂性は全くありませんが、他の祭にはない変な生活感と妙な段取り感がある、時代祭の神幸列。「本編より面白い」ことはないですが、コスプレパレードから神の祭となった経緯が、何となく本編以上に感じられ興味深い行事ではあります。
平安神宮 – 公式サイト
時代祭 – 平安神宮
時代祭行列順路 – 平安神宮
時代祭 – Wikipedia