「阿波踊りへ着陸する」街・徳島の熱過ぎる夏
徳島の空港は、その名を「徳島阿波おどり空港」といいます。名前だけ聞くと「ちょっと、どうよ」と問い正したくなりますが、しかし実際の阿波踊りを目撃したら、そのネーミングが真っ当なものであることがわかるはずです。何なら、阿波踊りの期間中は「空港」の方をカットして「当機はこれより阿波踊りへ着陸します」とアナウンスしてもいいくらいかも。本当に冗談ではなく、阿波踊りの間の徳島は、それくらい異常な祝祭空間へ突入します。
一般的に阿波踊りといえば、いわゆる「総踊り」のビジュアルを連想されるかも知れません。2000人近い踊り子がなだれ込み、男は勇猛かつユーモラスな男踊りを、女は編み笠かぶって艶っぽい女踊りを、踊りこむ。その様は正に圧巻であり、美と熱狂が同時にスパークする凄まじいものであります。が、より生々しい熱狂を求めるなら、その辺の道で展開される踊りの方が、より凄味があるかも知れません。
阿波踊り中の徳島市街では、至るところでいろんな連が踊りまくってます。歩行者天国ならぬ踊り子天国となった道で、連はもとより、完全私服の烏合の衆が素性不明の地元CMの音楽に乗って踊ってたりとか。地震かと思ったら角の向こうで太鼓が乱打されてたり、女踊りの行列と肩が触れそうな距離ですれ違うことも、珍しくはありません。
踊りと同時にインパクトがあるのが、音楽、すなわち鳴り物でしょう。阿波踊りでイメージされる「ジャンカジャンカ」という3連シャッフルのビート、あれは道ではあんまり聞きません。道のは、もっと、速い。笛と三味線をカットして、太鼓メインで押して押して押しまくるビートは、至近距離で聴くとほとんどトランス、あるいはハードコアの領域です。
道にぶっ倒れた人の凄みも見逃せません。踊り疲れて、路上に「落ちた」人たち。たいていは横に仲間がついてるので安心ですが、誰もいなければ絶対救急車を呼ぶくらい、皆さん、シャレにならない倒れ方をされてます。で、そんな人がゴロゴロ転がってます。本当に、強烈です。
祭りのない時の徳島は、地味です。日本で唯一電車が走ってないくらい、地味です。しかし、だからこそ、祭りは熱い。熱過ぎて、何かもう殺気に近いものが漂うくらい、熱い。「阿波踊りへ着陸」するのは、本当なのです。
阿波おどり– 公式
まちかどの阿波おどり– 徳島市
阿波踊り – Wikipedia