『べらぼう』裏切り連発のどん底回…大切な期待や夢を失った蔦重・歌麿・定信の心情を考察【前編】

高野晃彰

「恋心だよ」「俺が『恋』をしていたからさ」……

歌麿の言葉の意味に、気付かない蔦重。

大河ドラマ「べらぼう」43話『裏切りの恋歌』。今回も、絶妙な副題に痺れました。

※前回放送の解説記事↓

「べらぼう」蔦重と歌麿、あの頃にはもう…おていさんの安否、失脚の定信…11月9日放送の振り返り&考察

「もう蔦重とは終わりにします」遊女たちの美人画を描き上げ、ついに蔦重(横浜流星)と決別した歌麿(染谷将太)。最後までその思いに気づくことなく、蔦重は永年の礼とお詫びを伝える手紙が視聴者の胸を打ちま…

「歌麿が西村屋と組んで仕事をする」という話を聞き、慌てて歌麿の家に駆けつけた蔦重(横浜流星)に、歌麿(染谷将太)は数枚の大首絵の下絵を「これは蔦重へ」と差し出します。

「いってえ、何を描いたんだ?」と聞く蔦重に、歌麿は冒頭のセリフを返しました。

その絵は、袂をわかつ覚悟を決めた歌麿が、最後に“叶わぬ“想い”を託したラブレター。けれど、その“想い”には全く気が付かない……どころか、 “陽キャ”のポジティブ思考で勘違いする蔦重に、とうとう歌麿は「蔦重とはもう組まない」という決定的な言葉を告げたのです。

副題にあるように、今回は誰もが予想もしなかった「裏切り」により、“期待”や“夢”を失った人々が描かれました。

たとえば……
自分の信念に基づき幕政に励んでいたのに、失脚した松平定信(井上裕貴)。
蔦重の強引なビジネスの進め方と、子供ができたことで居場所を失った歌麿。
そして、歌麿を失った蔦重。
さらに、待望の赤子を失った蔦重と妻てい(橋本愛)。

“どん底回”ともいわれている『裏切りの恋歌』を振り返り考察してみました。

6ページ目 突然、周囲の裏切りによりどん底に落ちた定信

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