『べらぼう』恋川春町の覚悟の死とSNSで「理想の上司」と絶賛された主君・松平信義の言葉を考察【前編】
「戯ければ、腹を切られねばならぬ世とは、一体誰を幸せにするのか」
主君やお家を守るため、切腹せざるおえなくなった恋川春町(倉橋格/岡山天音)の死を、松平定信(井上祐貴)に伝えに出向いた、小島松平家の藩主、松平信義(林家正蔵)が「蔦屋重三郎の言葉」として定信に伝えた言葉。
怒りに震え振り絞るように定信にぶつけていました。心底、深く頷いてしまう言葉でした。
「幕府の政策を揶揄した本を書いただけで腹を切らねかればならない」という、理不尽さ。横暴な言論統制のせいで、一人のクリエーターが腹を切らねばならない世の中など、誰一人として幸せになれるはずもない……現代でも世界中で起こっている「権力者の悪政への批判」に対する締め付けを彷彿させます。
定信に春町の最期を伝えた主君・信義も、定信に対しての怒りが煮えたぎっていたことでしょう。
「理想の上司」とSNSでも絶賛の松平信義の涙、温情ある主君の言葉に流した春町の涙、訃報に言葉を失いながらも「オチを付けた」最期に泣き笑いしながら “覚悟の死”を読み解くチーム蔦重の涙、自信満々だった定信が、自身が作者を死に追い詰めたと知った慟哭。
深い愛情、感謝、友情、後悔、さまざまな立場のそれぞれの“涙”が描かれた、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」、第36回『鸚鵡のけりは鴨』。
いよいよドラマの節目となった今回を振り返って考察してみました。
