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『べらぼう』 ”エンタメの奇跡”で暴動が収束も…新之助の死に苦しむ蔦重を救い出した歌麿【後編】

『べらぼう』 ”エンタメの奇跡”で暴動が収束も…新之助の死に苦しむ蔦重を救い出した歌麿【後編】:2ページ目

自分のせいで友人を死なせてしまった蔦重の慟哭

新之助の行動と死は、蔦重にとっては大きな痛手でした。平賀源内(安田顕)も、瀬川(小柴風花)も救うことができなかった……その思いを忘れずに胸に残している蔦重。だからこそ、源内の「書を持って世を耕す」「思いを文字にして伝える」や、瀬川の「めぐる因果は恨みじゃなくて、恩がいい」が、いつも息づいているのを感じる場面は多かったですよね。

けれど、今回は、人を唸らせる名プロデューサーらしい発想で「エンタメの力」で暴動を収めることに成功したものの、一方では、大切な人を死に追いやってしまうことに。新之助の最後、蔦重の慟哭は身と心の置き所を失ってしまった人間の叫びでした。

立ち直れない蔦重。こればかりは、てい(橋本愛)の「才」ある言葉では救えません。ひさしぶりに「蔦重に絵を見せたい」と耕書堂を訪れた歌麿(染谷翔太)は、ていの暗い顔を見て「何かあったの?」と聞きます。

余談ですが、歌麿が耕書堂ののれんを上げて入ってきたとき、手代たちが皆「お帰りなさい」「お帰りなさい」と言ったのが、とても暖かくていい場面でしたね。

歌麿が、鳥山石燕(片岡鶴太郎)の家で一緒に暮らすことで本来の自分を見つけることができましたが、耕書堂も「お帰りなさい」と出迎えてくれる歌麿の「家」であり「家族」であることが、感じられてさりげないけれど、素敵な場面でした。

そして、歌麿は蔦重を探しに行きます。蔦重は新之助の亡骸を葬った土まんじゅうの前で、魂が抜けたような顔で地べたに座り込んでいました。げっそりと痩せこけて生気がない蔦重は、死相が浮かび上がっているように見えるほど。そんな蔦重に歌麿は「これ、見てもらいたくてさ」「これが俺の“ならではの絵”さ」と最近描いた絵を見せます。

これがのちに実際出版された『画本虫ゑらみ』となる狂歌絵本でした。見開き一図に二種類ずつ虫が描かれ、狂歌が二首ずつ収められています。咲き誇る花に引き寄せられて集まる、とんぼや蝶々、巣を張る蜘蛛、ケロケロと鳴き声が聞こえそうなかえるなど、一枚一枚に“命”が溢れています。世界的に有名な美人画とはまた違う、繊細さ、優しさが溢れた魅力的な絵でした。

3ページ目 花・虫・かえる…生命力溢れる歌麿の画で生気を取り戻した蔦重

 

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