久しぶりに故郷の三河国へ帰ってきた松平二郎三郎元信(演:松本潤)。
かつて松平家の本拠地であった岡崎城に入った元信は、城代の山田新右衛門(演:天野ひろゆき)と面会します。
新右衛門「遠慮なく(城を)お使い下され」
元信「では遠慮なく……」
慌てて石川数正(演:松重豊)に止められた元信は、岡崎城を出てみすぼらしい城下町へ。惨めな人質の立場を痛感させられる一幕でした。
さて、この山田新右衛門なる人物は何者なのでしょうか(今川家臣なのは分かりますが……)。
そこで今回は『徳川実紀(東照宮御実紀)』より、元信(元康)と新右衛門の面会とその後を紹介。果たして大河ドラマ「どうする家康」の通りだったのでしょうか。
「さてさて分別あつき少年かな」義元も賞賛した元信の態度
…… 君義元にむかはせ給ひ。それがし齢すでに十五にみち。いまだ本国祖先の墳墓にも詣でず。願はくば一度故郷に帰り祖先の墳墓をも掃ひ。亡父の法事をもいとなみ。故郷にのこせし古老の家人へも対面仕たしと仰らる。義元も御志のやむごとなきをもて。やむことを得ず志ばしの暇まいらせければ。 君御悦なヽめならずいそぎ三河へ立ちこえたまひ。御祖先の御墓に詣給ひ御追善どもいとなませ給ふ。此時岡崎には今川の城代とて山田新右衛門などいふもの本丸に住居けるに。 君仰えるは。吾いまだ年若し。諸事古老の異見をも請べければ。そのまヽ本丸にあるべしとて。御身はかへりて二丸におはしたり。義元も後にこれをきヽ。さてヽヽ分別あつき少年かなと感じけるとぞ。……
※『東照宮御実紀』巻二
元信は、故郷の三河に一時帰国できるよう、主君の今川義元(演:野村萬斎)に願い出ました。
「それがしはすでに15歳となりましたが、いまだご先祖さまの墓参りも出来ずにおります。お願いです。一度故郷に帰って亡き父(松平広忠)の法事をいとなみ、年老いた家人たちに会わせていただけないでしょうか」