燃え盛る炎の中へ…決死の覚悟でみんなを救った奈良時代の英雄・川部酒麻呂のエピソード:2ページ目
2ページ目: 1 2
「……よし、船の向きを変えよう!」
船首を風上に向けることで火勢を船尾⇒船首から、船尾のままに留め、消化しやすくなります。
「俺が舵を切って保持し、船首の向きを変える」
ここで酒麻呂が進み出たものの、舵はすでに炎の中。大火傷は免れないでしょう。
「それでも、みんなここで沈むよりマシだ。俺は行くぞ!」
かくして酒麻呂は燃え盛る炎の中で舵にとりつき、身体の焼けただれるのも構わず、船首の向きを変えることに成功。無事に火は消し止められ、人も荷物も損害を出さずに済んだそうです。
終わりに
この功績によって酒麻呂は松浦郡の員外主帳(いんがいしゅちょう。郡司の4等官)に任じられ、宝亀6年(775年)には外従五位下(がい じゅごいのげ)に叙せられました。
火傷がどの程度であったのかは記録がないものの、20年以上生きていたことから、どうにか無事であったようです。
我が身を惜しまずみんなを救った酒麻呂の活躍によってもたらされた(遣唐使が持ち帰れた)知識や交易品などは、日本の文化発展に大きく寄与したことでしょう。
※参考文献:
- 宇治谷孟『続日本紀(中)』講談社学術文庫、1992年11月
ページ: 1 2