よく「現金なヤツ」というけど…その語源を調べてみたら、文字通りの通貨だった

「何だよAのヤツ、あんだけ反対していたのに、社長が手当て出すって言ったらアッサリ手のひら返しやがって……本当に『現金』だな」

という具合に、節操のない態度および人を「現金(な人)」と言いますが、現金の表記は、文字通り通貨の現金で正しいのでしょうか。

今まで、何かゲンキンという言葉があって、その誤変換なのかと思っていたのですが、調べてみたところ文字通り通貨の現金だったようです。

どういう理由でそうなったのか、今回は「現金な人」の語源を紹介したいと思います。

現金払いで、いつもニコニコ

「ごっそさん。今日はツケにしといてくれ」

例えば、呑み屋なんかの代金を後日にまとめて支払う「ツケ払い」は、店側が貸しを忘れぬよう、帳面に「書きツケて」おくからそう呼ばれました。掛け買い、信用買いなどとも言いますね。

しかし、約束した期限(例えば20日〆の月末払い)になってキチンと(自発的に)支払ってくれる律義者はごくまれで、たいていは年末になると、小僧たちが取り立てに駆けずり回ったものでした。

「もしもーし!今日こそ溜まったツケ、キッチリ払って下さいよ!」

ドンドンと催促の戸を叩く光景が江戸のあちこちで繰り広げられ、よく落語などでも面白おかしく語り伝えられていますが、当事者たちは何とかして取り立てよう(客としては少しでも遅らせよう)と必死です。

晦日(みそか)そば 残った掛けは のびるなり
『俳風柳多留』より。

昔は一ヶ月がすべて三十日(みそか)で、月末に蕎麦を食べる「晦日そば」の習慣があったことから、食べきれずに残ってしまった掛け蕎麦をツケ(掛け払い)になぞらえ、麺がのびる≒支払いが延びると溜息をついたものでした。

そういう苦労があるばかりか、悪質な場合だと踏み倒されてしまうリスクもあるため、店側とすれば、よほど信用できる客でなければツケ払い(掛け売り)はなるべくしたくないのが本音。

3ページ目 現金払いであれば多少の無理は聞いてあげる

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