前回のあらすじ
トラウマ続出?背筋がゾワゾワくる大分県の怖い昔話「吉作落とし」を紹介【上】
怖い話と言えば、妖怪や幽霊が現れるホラー系や、人食い生物(サメ、熊など)や殺人鬼などが暴れ回るパニック系が定番でしょう。しかし、中には幽霊も殺人鬼も現れないどころか、登場人物が一人しかいないの…
今は昔、豊後国(現:大分県)のとある村に、吉作(きっさく)という若者が住んでおりました。
吉作は断崖絶壁に生える岩茸(いわたけ)を採って暮らしを立てていましたが、ある時、ふとした油断から命綱を手放し、岩棚に取り残されてしまいます。
自力で脱出する手立てを失った吉作は、助けを求めてひたすら叫び続けるのでした……。
いくら呼んでも来ない助け。ついに吉作は……
「おーい……!助けてくれぇ……!」
吉作の叫びは山々に谺(こだま)しますが、遠くで声を聞いた村人たちは「何だか山の方から不気味な声が聞こえる。きっと化け物だろうから、近づかないようにしよう」と誤解してしまいます。
「おーい……!助けてくれぇ……!」
それから何日も何日も助けを求め続けた吉作でしたが、結局誰も太助には来てくれません。
果たして飢えと寒さに吉作はついに錯乱。「きっと今は自由に空も飛べるはず」とばかり身を投げだし、美しく紅葉に染まった谷間へと吸い込まれていきました。
やがて、初雪が降るくらいになって「やっと山から不気味な声が聞こえなくなった」と人々が傾山に立ち入りはじめ、現場で発見された縄から「吉作(※)が岩棚に取り残され、やがて落ちた」ことを知ります。
(※村の中で岩茸採りをしている者を点呼して、吉作だけいなかったのでしょう)
そして後世の教訓とするため、その岩棚を「吉作落とし」と呼び伝えるのでした……はい、それっきり(おしまい)。