鍋料理はもちろん、焼き魚にひとたらし、餃子のタレに混ぜたり、冷奴やサラダにもよく合う「ポン酢」。柑橘の香りと酸味が料理を引き締めてくれる、まさに万能選手です。
けれども、名前の“ポン”について考えたことはありますか?
可愛らしい響きですが、実はそこにちょっとした言葉の歴史が潜んでいます。
※「語源」に関する関連記事:
実は「おてんば」と「やんちゃ」は外来語だった!?由来となった言葉はどこの国から?
日本語だと思っていたけれど、実は外来語由来!?という言葉は日常に潜んでいます。そのなかに「やんちゃ」と「おてんば」があります。※関連記事↓[insert_post id=83487]…
なぜ「東京」という名前に?他の候補地もあった?「江戸」が「東京」になった日
日本の首都であり、世界的にも有名な「東京」。ビジネスや文化の中心地として栄えています。では、みなさんは、なぜ「江戸」から「東京」という名前になったのかご存じですか?歴史を紐解いてみると、そのほかの候補…
この“ポン”は日本語ではなく、オランダ語の 「pons(ポンス)」 に由来します。意味は「柑橘の果汁」。つまり「ポン酢」は「ポンス」に日本語の「酢」を添えて生まれた言葉だったのです。直訳すれば「果汁+酢」。日本人が想像しがちな擬音の「ポン」ではないのです。
江戸時代、日本が唯一公式に交流していた西洋の国はオランダでした。長崎の出島を通じて、当時の日本には西洋の医学や科学の知識が少しずつ流れ込んでいきます。その学問は「蘭学」と呼ばれ、やがて多くの知識人や医師たちのあいだで大きく広がり、日本の学問や生活を変えていきました。
こうした過程で、さまざまな外国語が日本語のなかに溶け込み、外来語として定着していきます。
たとえば「ガラス」や「コーヒー」、「ビードロ」といった言葉は、今でも日常の中で使われていますが、じつは「ポンス」という言葉もその一つでした。
本来「ポンス」は果汁を意味していましたが、日本人にとってはその酸味が印象的で、「酸っぱい=酢」という感覚と重なって理解されていったのです。その結果、やがて「ポン酢」という文字表記が生まれ、現在のように醤油と合わせて使われる調味料のイメージが浸透していきました。
こうして異国の言葉が日本的な感覚と結びつき、新しい文化が形づくられていったのです。
