せっかく生まれた上野動物園のパンダ赤ちゃん、残念ながら亡くなってしまいました。日本中はもとより、特に上野周辺は悲しみに包まれています。名前を決める前に亡くなってしまった〇〇ちゃん。生命のはかなさを思い知らされます。
「夏休みには上野公園にパンダを見に行こうと思っていたのに!」という方、そのかわりと言ってはなんですが、同じ公園内の不忍池の蓮の花を見に行ってみてはいかがでしょう?泥の中からスンと美しい華を咲かせてくれる蓮。「♪ひ~らいた~ひ~らいた~ なんのは~ながひ~らいた~」は蓮のことですよね。汚濁にまみれた俗世にポツンと花開くようなさまから仏様の象徴になっていますが、本当に蓮を眺めているとそう思いますね。仏が蓮の上に乗っかるのもうなずけます。
その一方でビックリするのは、蓮の下のあの泥まみれの腐った茎。なんであんなにキレイな花が咲いているのに、下はあんなに汚ならしんでしょうね。蓮の上にお釈迦様が立って蜘蛛の糸を垂らしてるのも分かりますが、汚らしい池の底に「血の池」や「針の山」があって、カンダタがのたうち回っているのも分かる気がします。芥川龍之介が「蜘蛛の糸」を書いた蓮のイメージは、不忍池だったかもしれませんね。
しかし何の罪も汚れもなく死んでしまったパンダの赤ちゃんは、きっと今頃蓮の上でお釈迦様に抱かれているに違いありません。蓮の上と下は極楽と地獄。美しい蓮から弁天島を望む風景は、まさに極楽浄土をイメージしています。
動物園もあって、美術館もあって、そして池もあってという上野公園ですが、そもそも不忍池は人工池ではなく、自然にできた池です。江戸時代の初めに天海和尚によって上野寛永寺が開かれた時に、蓮の名所であった琵琶湖の真似をして植えられたのではないかと言われています。終戦直後に水が抜かれて田んぼになっていた時期があるようですが、すぐに蓮の名所として復活しました。
不忍池の蓮の花は7月下旬から8月中旬が見頃だそうです。蓮の花に思いを託して、パンダの赤ちゃんの成仏を心静かに祈りましょう。