人間「お金だけがすべてではない」と言いますが、お金がないと何かにつけて不便を強いられるのが世の中というものです。
お金がない苦しみを味わった人がお金を手に入れると、否が応でもお金の貴重さを感じずにはいられません。
今回は平安時代に歌人として活躍した平兼盛(たいらの かねもり)が詠んだこんな和歌を紹介したいと思います。
人々を惹きつけるお金の魔力
招かねど あまたの人の 集(すだ)くかな
富といふものぞ 楽しかりける
【意訳】呼んでもいないのに、多くの人たちが私のもとに集まってくるではないか。いやぁ、富というものは実に愉快だなぁ……。
貧乏な時は誰も寄り付きやしないのに、財産が手に入ると、どこからともなく金の匂いをかぎつけた連中が集まってくる。そんな様子が詠まれています。
現代でも宝くじが大当たりするなど、ひと財産を築くや否や、今まで会ったこともない「親戚」や「友人」が金を集(たか)りにやってくるものです。
「そんなお金目当てで人が寄ってきても、お金がなくなれば誰もいなくなるよ。そんなの嬉しいの?」
なんて声も聞こえそうですが、それさえも嬉しくなってしまうほど、貧乏に苦しんだ人も少なくありません。
果たして兼盛はそこまで貧乏だったのか、その生涯も振り返ってみましょう。