「妾でもいい。あの人以外の妻にはなれない」
そう思って藤原道長(柄本佑)と再会したまひろ(紫式部/吉高由里子)。しかし道長の口から聞かされたのは源倫子(黒木華)との縁談です。
先週時点で、妾でもいいと言っておけば……悔やまれてならないまひろは呆然と帰宅し、慣れない酒を呷るのでした。
(でも、妾なら遅かれ早かれ嫡妻は迎えるのだし、別にいいんじゃない?とかそういう野暮は言いっこなしです)
……さて、NHK大河ドラマ「光る君へ」皆さんも楽しんでいますか?今週ももどかしい恋愛モードで話が進みます。
新キャラも登場した第12回放送「思いの果て」、今週も振り返ってまいりましょう!
さわ(野村麻純)のモデルは平維将女?
「高倉の女」ことなつめ(藤倉みのり)には、さわ(野村麻純)という娘がいました。
まひろの友人 さわ
野村 麻純(のむら・ますみ)まひろ(紫式部)の友人。父の藤原為時が世話をする女性の、以前の結婚で生まれた娘。愛情に飢えた、一風変わった娘で、まひろを慕い親しくなる。やがて父親の九州赴任についていくことになる。
※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイト(登場人物)より。
そう面識もないのにグイグイ距離を詰めてきたり、弟の藤原惟規(高杉真宙)といい感じになっていたり……父親から何もさせてもらえなかったということから、いいところのお嬢さんっぽいですが、一体何者なのでしょうか。
創作キャラかと思いきや、どうやら平維将(たいらの これまさ)の娘と思われます。
紫式部の歌集『紫式部集』に、こんなやりとりがありました。
筑紫(九州)へ行く人の娘が、紫式部にこんな和歌を贈ります。
西の海を おもひやりつつ 月みれば
ただに泣かるる ころにもある【意訳】これから向かう九州がどんなところかと思いながら月を見上げると、ただ涙が出てしまうのです。
これに対して、紫式部の返歌がこちら。
西へ行く 月のたよりに たまづさの
かきたえめやは 雲のかよひぢ【意訳】あなたが遠く九州へ行ってしまっても、決して手紙を書きますからね。空を行き交う雲に乗せて届けます。
この「筑紫へ行く人」が平維将である確証はないものの、赴任時期や親戚関係(維将の妻は式部の伯母=その娘とは従姉妹同士)などからそのように考える説があるそうです。
ちなみに劇中では存在が割愛されていますが、紫式部には亡き母の代わりに自分を育ててくれた姉(藤原為時長女)がいました。
姉はほどなく世を去ってしまい、寂しい思いをしていた時期に親しくなったと言います。
離れ離れになってしまった後、二人の再会がかなうことはありませんでした。