「どうする家康」絶体絶命の危機を乗り越え、神の君が無事に生還。第29回放送「伊賀を越えろ!」振り返り

徳川家康(演:松本潤)の人生における三大危機の最後「神君伊賀越え」を乗り切り、天下人への歩みを進めていたはずの明智光秀(演:酒向芳)はアッサリと敗死。

「今までで一番えぇ顔しとるがや」

光秀の首級を眺める羽柴秀吉(演:ムロツヨシ)の一言が、実に味わい深く感じられた第29回放送「伊賀を越えろ!」。

……十年六月和泉の堺より伊賀路を渡御の時従ひたてまつり、伊賀は正成が本国たるにより、仰をうけたまはりて郷導したてまつる。……

※『寛政重脩諸家譜』巻第千百六十八 服部氏 服部(服部半蔵正成)

伊賀は自分の故郷だと言いながら、一度も現地に入ったことはなく、やることなすこと裏目に出てしまう服部半蔵(演:山田孝之)。しかし何やかんやで乗り越えて、めでたく女大鼠(演:松本まりか)を側室に迎えました。

そして皆さんお待ちかね、三河一向一揆(第9回放送「守るべきもの」)以来家康の元を離れていたイカサマ師こと本多正信(演:松山ケンイチ)。お得意の舌三寸でみごと家康の窮地を救い、家臣の列に復します。

今週もてんやわんやだったNHK大河ドラマ「どうする家康」第29回放送「伊賀を越えろ!」気になるトピックを振り返っていきましょう。

ただ親切なだけだった多羅尾光俊(演:きたろう)

近江国小川城の主・多羅尾光俊(たらお みつとし)。いつぞや上ノ郷攻め(第6回放送「続・瀬名奪還作戦」)でお世話になった伴与七郎(演:新田健太)も一緒です。

警戒する家康たち。半蔵のもっともらしい話を真に受けて早々に立ち去ってしまいましたが、実際には大歓迎を受けた上に護送してもらっています。

……江州信楽に至らせ給へば。土人木戸を閉て往来を止めたり。此地の代官多羅尾四郎光俊はこれも秀一が舊知なれば。秀一その旨いひやりしに。光俊すみやかに木戸をひらかせ。御駕を己が家にむかへ入奉り種々もてなし奉る。このとき赤飯を供せしに。君臣とも誠に飢にせまりし折なれば。箸をも待ず手づからめし上られしとぞ。……

※『東照宮御実紀附録巻四』「天正十年家康伊賀路之危難」

※文中に登場する秀一(長谷川秀一)は、信長につけてもらった道案内人です。

光俊が家康たちに赤飯を炊いておもてなししたところ、家康たちはあまりに飢えていたようで、箸も待たずに手づかみでがっついたそうです。

劇中でも再現してくれないかと思っていたところ、握り飯になっていたため自然な形で描かれていましたね。

個人的には「徳川様ウェルカム」を表現するために手描きされた三葉葵の家紋が「ハート三つ」になっていたところがお気に入りです。これはきっと多羅尾家の人々が想像で描いたのでしょう。

「おい、徳川様を歓迎するために家紋を手描きしようぜ。ところで何の紋だっけ?」

「三葉葵と聞いたから、葵の葉が三つだろう」

……その結果、葉の先端をすべて下に向けたハート三つ紋が爆誕した次第。拙くとも、彼らなりの想いが伝わりました。ただし、これはフィクション(創作の可能性が高い)です。

ちなみに光俊は家康を見送る時に息子たちと軍勢を護衛につけ、餞別として日ごろ大切に拝んでいた勝軍地蔵を献上。これは後に愛宕山圓福寺(東京都港区)へ安置され、今日に至ります。

何から何までおんぶに抱っこ、多羅尾光俊たちから受けた恩義に、家康は手厚く報いたのでした。

2ページ目 百地丹波(演:嶋田久作)と伊賀者の気質

次のページ

この記事の画像一覧

シェアする

モバイルバージョンを終了