源実朝(演:柿澤勇人)の暗殺によって「主なき宿」となった鎌倉。このまま鎌倉殿の不在が続けば、御家人たちを束ねる正当性が失われてしまいます。
一刻も早く次の鎌倉殿を迎えたいところですが、その最有力候補であった頼仁親王(よりひとしんのう。後鳥羽上皇の皇子)の話は一向に進みません。
後鳥羽上皇(演:尾上松也)としては物騒な鎌倉へ大事な皇子を出したくないし、執権・北条義時(演:小栗旬)としてはもう少し扱いやすい人物に替えたいと思っているようです。
でも、互いに自分から言い出す訳にはいかず、相手から断らせるよう駆け引きが始まりました。
……というのが前回のあらすじ。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、第46回放送は「将軍になった女」。実朝亡き後、次の鎌倉殿は誰になるのかが描かれる予定です。
サブタイトルが示すのは、もちろん政子(演:小池栄子)。後世「尼将軍」と呼ばれた彼女は、果たして鎌倉の難局をどう乗り越えていくのでしょうか。
今回も鎌倉幕府の公式記録『吾妻鏡』をひもときながら、大河ドラマを予習していきましょう。
「ただし、今ではない」
信濃前司行光上洛。是六條宮。冷泉宮兩所之間。爲關關(東)將軍可令下向御之由。禪定二位家令申給之使節也。宿老御家人又捧連署奏状。望此事云云。
※『吾妻鏡』建保7年(1219年)2月13日条
1月27日の事件後、政子は二階堂行光(にかいどう ゆきみつ。二階堂行政の子)を京都へ派遣しました。用件はもちろん、親王殿下の鎌倉下向をお願いするためです。
「六条宮(ろくじょうのみや。雅成親王)か、冷泉宮(れいぜいのみや。頼仁親王)を鎌倉へお遣わし頂きたい」
卯剋。伊賀太郎左衛門尉光季爲京都警固上洛……。
※『吾妻鏡』建保7年(1219年)2月14日条
「坂東で鎌倉殿が暗殺されて、京都も何かと不穏と言いますから、伊賀殿に警護させましょう」
という名目で翌2月14日、伊賀光季(いが みつすえ。“のえ”の兄弟で、義時の義兄弟)の軍勢を京都へ派遣しました。京都守護とはもちろん名目、親王下向のお願いを後押しする(朝廷に圧力をかける)ためです。
武藏守親廣入道爲京都守護上洛。
※『吾妻鏡』建保7年(1219年)2月29日条
更に2月29日、大江親広(おおえ ちかひろ。大江広元の子)の軍勢を京都へ派遣。色んな意味で心強いですね。
信濃前司行光使者參着。彼宮御下向事。今月一日達天聽。於仙洞有其沙汰。兩所中一所。必可令下向給。但非當時事之由。同四日被仰下。此上可歸參歟之由申之云々。
※『吾妻鏡』建保7年(1219年)閏2月12日条
伊賀光季と大江親広がしっかり京都を警護してくれたお陰か、朝廷からの返事も早くいただけたのでしょうか。
閏2月12日、二階堂行光が鎌倉へ帰ってきました。
「閏2月1日にお願いが届きました。して4日に『よかろう。六条宮か冷泉宮のどちらかを必ず遣わそう。ただし今すぐにではない』とのお返事をいただきました」
いつかきっとその内に……守る気がない約束の決まり文句。とは言え、親王殿下をお迎えしたい鎌倉当局としては「じゃあもういいです」とも言えません。
目の前にぶら下げられたエサにイライラしていたところ、京都から使者がやってきました。が、一旦ここで話を切ります。