ついに北条時政(演:坂東彌十郎)が出家、愛妻りく(演:宮沢りえ。牧の方)と共に鎌倉を去っていきました。
鎌倉殿・源実朝(演:柿澤勇人)に刃まで向けてしまった時政。その罪を何とか死一等減じるために尼御台・政子(演:小池栄子)は命乞いをし、当の実朝さえ頭を下げる始末。
ここまでされてはさすがの北条義時(演:小栗旬)も許さざるを……と言うより実のところ、一番時政に生きていて欲しかったのは義時だったのではないでしょうか。
(※ごく穿った見方をすれば「大いなる茶番劇」と言えなくもありません)
「父上、小四郎は無念にございます……今生の別れでございます……」
ずっと時政の背中を見て走り続けた義時は、ついに「坂東武者たちのてっぺん」に立つこととなります。
しかし鎌倉殿を軽んじる義時の動きを後鳥羽上皇(演:尾上松也)は危険視。鎌倉と朝廷の間には、不穏な空気が流れるのでした。
……NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第38回放送は「時を継ぐ者」。
サブタイトルの意味するところは、もちろん北条一族の通字「時」を受け継ぐ義時たちと、そして季節(とき)を告ぐウグイス。
チッチッチ……その声を聞くたび、義時たちは朗らかな父と過ごした楽しい北条ファミリーを思い出すのでしょう。
さて、牧氏の変についてはこれまでじっくり紹介してきたので、ここでは気になった人物についてピックアップ。大河ドラマの振り返りと行きましょう。
もう少し「牧の方」らしい悪どさが欲しかった“りく”
『吾妻鏡』では詳しく書かれなかった牧氏の変。劇中では実朝に出家(の起請文)を迫って時政が白刃を抜く暴挙に出たものの、今一つ緊張感に欠けるように感じました。
りくは「少し痛い目を見せる」よう時政を促しますが、まさかほっぺを抓ったりデコピンしたりとは行かず、刀をチラつかせるくらいが関の山(それでも十分すぎる謀叛ですが)。
そもそも担ぎ上げようとしていた平賀朝雅(演:山中崇)が乗り気でないことから判るように、十分連絡もとっておらず、その後の段取りを何も考えていないことは明らか。
早くも行き詰った“りく”が政子に平伏して時政の助命を願い出るのも、「その程度の覚悟で謀叛を起こすのはいかがなものか」と思ってしまいます。
(どんな悪女であっても、夫の時政に心から愛情を持っていた点については、個人的に好感は持てたものの)
天下に悪名高き牧の方としては、ちょっと物足りない印象です。とは言え、あまり悪あがきされてしまうと殺さざるを得なくなってしまうため、この辺りがもろもろ匙加減だったのでしょう。
また別れ際、政子&実衣(演:宮澤エマ。阿波局)との思い出話や、のえ(演:菊池凛子。伊賀の方)に心得を残す場面は意を得たものでした。
一、 無理になじもうとしないこと(これは見え透いたあざとさを遠回しに批判?)
一、 北条に嫁いだことを誇りに思うこと(こっちは“辛気臭い”と義時を軽んじる態度を批判?)
……果たして、りくの教えがどのような形で活きてくるのか、のえの今後に注目していきましょう。
「親子揃って意気地のないこと。手の届くところに大きな力があるなら、迷わずつかみ取りなさい」
また義時への“はなむけ”は、まさに時政へ賭けた“りく”の人生そのものだったのかも知れません。