さて、前回修善寺であんな悲劇があった一方、鎌倉では源実朝(演:柿澤勇人)による新体制が始まりました。
まずは宿老たちの政務を見学しつつ、武芸に学問に励む毎日。立派な鎌倉殿を目指して、日夜懸命に努力を重ねます。
しかし京都から迎える御台所との結婚に不安を抱えており、落ち着かない日々が続くのでした。
そんな中、母の政子(演:小池栄子)がそっと置いてくれた和歌集に心惹かれ、実朝はその才能を開花させることになります。
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、第34回放送のサブタイトルは「理想の結婚」。夫婦の形は夫婦の数だけあるものの、もちろんどれが正解ということはありません。
果たして実朝は幸せになれるのか、そして北条義時(演:小栗旬)に接近する”第3の女”のえ(演:菊地凛子)の存在も気になるところ。
それではさっそく、今週も振り返っていきましょう。
- 薙刀に弓術、政治や処世術まで…実朝の鎌倉殿修業
- 増長する時政と、武蔵国における畠山重忠との対立
- 平賀朝雅が犯人だった?北条政範の急死
- やっぱり茸が好きな女子なんていない!?
- 次週・第35回放送「苦い盃」
薙刀に弓術、政治や処世術まで…実朝の鎌倉殿修業
午前中は政務の見学、午後は八田知家(演:市原隼人)による薙刀や和田義盛(演:横田栄司)の弓術指導、そして大江広元(演:栗原英雄)による政治の講義……。
「政の大義とは何か。それは天下の心をもって心となし、百姓(※)の心をもって心とすれば…無為(ぶい)にして治まる」
(※)ここでは「ひゃくせい」と読み、いわゆるお百姓さん(農民)に限定されず、天皇陛下より姓(せい、かばね)を賜った天下万民を指します。
居眠りをしてしまった実朝ですが、あれだけしごき抜かれた後の座学では眠くもなろうというもの。乳母の実衣(演:宮澤エマ)が「多すぎやしませんか」と心配するのも解らなくはありません。
ちなみに、広元が講義していた出典は恐らく『老子』と思われます。
聖人無常心、以百姓心爲心(聖人に常の心なく、百姓の心をもって心となす)……
※老子『道徳経』第49章【意訳】よき君主は思い込みを持たず、天下万民の幸せを願って政治に臨む。
……爲無爲則無不治矣(無為をなさば、すなわち治まらざるなし)。
※老子『道徳経』第3章【意訳】私利私欲を捨てた(無為の)政治を行なえば、世が平和にならないはずがない。
これらを広元なりに(と言うより視聴者向けに)かみ砕いたのが先ほどのセリフ。大切なことではあるのですが、いささか抽象的なので実朝でなくても居眠りしてしまいそうです。
夜は三浦義村(演:山本耕史)による処世術の講義……講師の人選はともかく、その科目名に苦笑いした視聴者は多かったことと思われます(例えば礼儀作法とか)。
後腐れのない女子との別れ方……結婚目前の相手に教えるべきことではないかと、いや、却って夫婦生活を維持するために必要な心遣いかも知れませんね。
深々と平伏した平六の背後には「天命」の文字。伴侶とのご縁はまさに天命と言ったところでしょうか。その大仰さに再び苦笑。果たして義村の教えは、御台所となる千世(演:加藤小夏。坊門姫)との生活でどのように活かされるのでしょうか。
何かと大変な日々の中、相撲の稽古を終えた義盛が「もっと精のつくものを食った方がいい」と実朝を鹿汁に誘います。
知家と義時も一緒に御所を抜け出して和田邸へ。義盛が三日かけて仕留めたという可愛い「鹿之助(しかのすけ。義盛の命名)」をみんなで平らげたのでした。
これから食おうとする鹿に名前なんてつけたら情が湧いて食いづらくなってしまいそうですが、鹿であろうが(勝手につけたとは言え)名前のある対等な相手として尊重する態度は、恐らく義盛なりの誠意なのでしょう。
また巴御前(演:秋元才加)による鹿之助の顔真似(似ているのでしょうか?)など、実朝にとって夫婦や家族の団欒を楽しむひとときとなったようです。