「あの娘、生意気じゃない?」欲に目がくらんで同僚を惨殺した女官・長野女王のエピソード

古来「貧すれば鈍する」とはよく言ったもので、人間余裕がなくなってくると、正常な判断が働かなくなってしまいがちです。

はたから客観的に見れば「どうしてそれが成功すると思った?」という愚かな決断でも、視野の狭まってしまった当事者は「それが唯一の選択肢にして最適解」とばかり突き進んでしまうこともしばしば。

今回はそんな一人、平安時代の女官・長野女王(ながのじょおう)のエピソードを紹介したいと思います。

「あの娘、ちょっと生意気じゃない?」

長野女王は生没年も父母・系図も不明ですが、女王と称されている点から皇族に連なることは間違いなさそうです。

彼女は朝廷で女性たちに舞楽を教育指導する内教坊(ないきょうぼう)に女孺(にょじゅ。下級女官)として出仕していたと言います。

これは皇族がよほど繁栄して、天皇陛下にごく近しい者を除いて下級女官として召し使われるほど人が余っていたのか、それとも花嫁修業・職業体験的な意味で勤めていたのかも知れません。

そんな長野女王は同室に寝起きしていた出雲家刀自女(いずもの いえとじめ)と仲がよかったそうです。

刀自(とじ)とは女性に対する尊称で、家刀自女とは家庭の主婦。出雲家の内儀という意味になります。

結婚して家庭を持ち、落ち着きの出てきた女性を、まだ若い長野女王の教育役につけたのでしょうか。

しかしある時、二人の部屋へ新入りの船延福女(ふねの のぶとみのむすめ)がやって来ると、様子が一変。

「ねぇ出雲。あの娘、ちょっと生意気じゃない?」

3ページ目 その夜、二人は寝静まった船延福女を……

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