税金泥棒は許さない!名将・山本五十六のブレない信念がカッコいい

何かと不公平の多い世の中、その理不尽さに憤った方は決して少なくないと思います。

「自分はキチンとやっているのに、アイツはインチキばかりして、あろうことか、それがまかり通っている!」

など、そういう不満が積み重なると、キチンとやっている自分が馬鹿みたいに思えてしまうこともしばしば。

そこで「みんながやっているから」と自分もインチキを行い、次第に「世の中そういうものなのだ」と開き直る手合いを、少なからず見てきました。

しかし、本来キチンとすべきことには相応の理由すなわち公共(みんな)の利益があり、みんながそれを放棄してしまったら、社会は崩壊してしまいます。

今回はそれを戒めた海軍の名将・山本五十六(やまもと いそろく)のエピソードを紹介したいと思います。

海軍の予算会議にて

今は昔、山本五十六が海軍次官を務めていたころ(昭和11・1936年~同14・1939年)のことです。

海軍省の中で、大蔵省(おおくらしょう。現:財務省)に予算案を提出するための会議(予算省議)を開いていると、航空本部を代表する稲垣生起(いながき あやお)少将が、こんなことを言いました。

「航空部隊(※)の予算が足りません。もっと上げて下さい」
(※)当時の軍隊は、現代の自衛隊と異なり陸上・海上・航空に分かれておらず、陸軍と海軍がそれぞれ航空部隊を管理していました。

すると、他部門の者が「これだけ確保できれば充分に航空部隊を運用できるだろう」と口を挟むものの、稲垣少将は続けます。

「お言葉ですが、大蔵省に出した予算案がそのまま通過することはまずありえません」

今も昔も予算の獲得はお役所仕事の正念場であり、大蔵省は各省庁の要求金額から一円一銭(銭は1/10円)でも多く削ろうと必死なのです。

「それこそ血を吐く思いでギリギリまでムダを削り込んだ最低限の予算案であろうと、どんぶり勘定テキトーに水増しした予算案であろうと、大蔵省の連中は一切お構いなし。それこそ『どうせ水増ししているんだろう』とばかり一律に天引きしてしまいます」

「まぁ、そうですな」

「陸軍の連中なんかは要領がいいので、どうせ天引きされてしまうのだから……と百も承知で予算を水増し要求しているのです。ところが我らが海軍では、大事な航空予算を最初からギリギリまで削って要求しています。これ以上削られてしまったら、私は海軍の航空隊運用に責任が持てません」

積もりに積もった不満をぶちまけるように稲垣少将が訴えたところ、それまでずっと黙って話を聞いていた山本五十六が言いました。

「不肖ながら、航空分野については君たちよりよく知っているつもりだ。どのくらいの予算でどのくらいの整備ができるか、君たちより心得ているつもりだ……貴官の言い分は、十二分に理解している」

「それでは、なぜ?」

大蔵省の天引きを織り込んだ予算要求をしないのか……山本五十六は、言葉を続けます。

よそで悪いことがまかり通っているから、海軍も同じようにしていいとでも言うのか。そういう国賊、税金泥棒がおればおるほど、我ら海軍は一銭でも予算を切り詰めねばならん」

この言葉を聞いて、稲垣少将はそれ以上の反論を控えたということです。

2ページ目 現代人に訴えかける山本五十六の確たる信念

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