前回のあらすじ
時は幕末、暗殺された父・佐久間象山(さくま しょうざん)の仇討ちを志して新選組に入隊した三浦啓之助(みうら けいのすけ)。
しかし一向に仇討ちどころか乱暴狼藉の数々、局長である近藤勇(こんどう いさみ)の寵愛をいいことに好き放題やっていました。
どうにか追っ払いたい副長・土方歳三(ひじかた としぞう)らの説得もどこ吹く風、啓之助の暴走は留まるところを知りませんでした。が……?
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憎まれっ子、世に憚る!父親の仇討ちで新選組に入隊した三浦啓之助の生涯を追う【上】
新選組を脱走するも……
そんな啓之助でしたが、ついに慶応二1866年に悪友?の芦谷昇と一緒に新選組から脱走してしまいます。
だったら土方に説得された時点でさっさと帰れば良かったのに……とも思いますが、新選組に居座るだけ居座った挙げ句、行いを改めることもなかったであろうため、あるいは唯一最大の庇護者であった近藤勇から見放され、とうとう居場所がなくなってしまった(たぶん両方)とも考えられます。
「追えっ!脱走者は切腹だ!」
……と口では言いながら、内心「やれやれ、やっと居なくなってくれたか」と胸をなで下ろした土方たちの安堵が察せられます。
追手の中には本気で啓之助を切腹させたい者もいたでしょうが、その多くは「あんな奴、居なくなってくれればそれで充分」とでも思っていたのか、追跡もゆるゆるだったようで、啓之助たちは無事に故郷・信州松代まで逃げおおせたのでした。
辛くも切腹の危機から脱した啓之助。しかしそんな事くらいで改心するようなタマでもなく、地元に帰っても芦谷昇と一緒に乱暴狼藉に明け暮れ、とうとう松代藩によって捕らえられてしまいます。
この時、共犯者であった芦谷昇は啓之助を囮(おとり)にして逃亡。裏切られたことを知った啓之助の無念は察するに余りあるものの、身から出た錆と言うよりありません。
2ページ目 「おめェの頭脳は、新しい日本で必ず役に立つ……」