世界で初めて乾電池を発明し、「乾電池王」と呼ばれた人物がいます。彼の名前は、屋井先蔵(やいさきぞう)。
1863年、現在の新潟県長岡市に生まれた先蔵は、幼いころから天体や水車、コマなど回り続けるものに興味を寄せていました。13歳になると奉公に出て、時計店で働くようになりました。
時計店で身を粉にして働くうちに、精密に回り続ける歯車たちのとりこになっていきます。屋井は機械についてさらに学ぶために上京し、東京職工学校(現在の東京工業大学)への入学を目指します。ところが、2度目の受験の際、正確な時計が周囲にひとつもなかったために、試験会場に5分遅刻してしまい、受験できないという苦い経験をしてしまいました。当時の時計は手動のゼンマイ式が主流で、街中で目にできる時計が示す時刻もバラバラでした。