古来「口は禍(わざわい)の因(もと)」と言いますが、因とは「口が大きい」と書きます。いくら自信があっても大言壮語はほどほどにしないと、思わぬトラブルの因に……。
という訳で、今回は日本における最古級の史書『日本書紀』より、古代の天才職人と雄略天皇のエピソードを紹介したいと思います。
「私、失敗しませんから」豪語する眞根
時は雄略天皇十三469年9月のこと、ある所に韋那部眞根(いなべの まね)という腕のいい木工職人がおりました。眞根はいつも岩の上に材木を置き、それを斧で削って製品を作っておりましたが、材木を岩の上なんかに置いて、もし手元が狂ったら斧の刃が欠けて危なそうです。
そんな眞根の仕事ぶりを見かけた雄略天皇(ゆうりゃくてんのう。在位:安康三456年~雄略二十三479年)も気が気でなかったようで、ある日、眞根に訊ねました。
「そなた、そんな石の上で作業して、失敗したらどうするんだ?(原文:恆不誤中石耶)」
しかし、眞根は自信満々に答えました。
「私、失敗しませんから(原文:竟不誤矣)」
そう言うなり涼しい顔で仕事に戻った眞根ですが、雄略天皇の方は、やっぱりモヤモヤが収まりません。
(よし!そんなに言うなら、一つ試してやろうじゃないか)イタズラを思いついた雄略天皇は、御所(皇居)へ飛んで帰りました。