「枕草子のやりとりを探る:藤原行成 編1」はこちら。
清少納言とは気の合う友人?枕草子のやりとりを探る:藤原行成 編
中宮定子のサロンでは評判の悪い行成藤原斉信と同じく蔵人頭であった藤原行成も、中宮定子サロンに度々顔を出し、清少納言とも親しい間柄でした。「枕草子」にもよく名前が登場している人物です。今回紹…
「逢坂の関」のやりとりで知られる二人
前回に続き、「枕草子」に見られる清少納言と藤原行成の関係を取り上げます。今回紹介するのは「頭弁の、職にまゐりたまひて……」の段。有名な「小倉百人一首」にもとられた「逢坂の関」の歌のやりとりが詳細に記された段です。
この二人の関係は、漫画の「うた恋い。」においてはお互い好意があるように描かれていますよね。この段はまさにその最たるものです。
内容としては、職の御曹司に参上していた行成は、夜更けまで清少納言と話をしていました。しかし翌日は一条天皇の物忌なので早く殿上に詰めなければ、と帰ってしまうというもの。翌朝、行成は次のような文を贈ってきます。
「今日は、残りおほかる心地なむする。夜をとほして、昔物語も聞え明かさむとせしを、鶏の声にもよほされてなむ」
「枕草子」(校注・訳:松尾聰・永井和子「新編日本古典文学全集」/小学館より)
「今日は心残りでした。夜通し昔話などして語り明かしたかったのに、鶏の声に急き立てられてしまって……」という内容。さあ、ここからが有名な「逢坂の関」の歌のやりとりです。