芥川龍之介の名作「杜子春」実は古代中国の伝奇小説が元ネタ。そして結末が大きく異なる理由とは?

やたろう

小学生や中学生が学校のテキスト、もしくは読書感想文の題材に選ぶことが多い作品の中に芥川龍之介の作品中でも名作として知られる『杜子春』があります。この作品は唐代の洛陽や峨眉山を舞台に、孤独な若者・杜子春と仙人の鉄冠子が織りなす奇跡の数々、最後を彩る爽やかながらも心温まる感動が描かれますが、実は芥川氏による創作ではなく元ネタとなった文学が存在したのです。

幻術、冒険、転生…原典となった中国文学も奇想天外だった

『杜子春』の元ネタになったのは中国の唐代に書かれた様々なお話を集めた『唐代伝奇』と呼ばれるジャンルの作品で、その中に収録されている『杜子春傳』と言う物語です。それは、以下のようなあらすじになります。

北周から隋の時代の長安に住んでいた不真面目な青年・杜子春(要するにニートですね)は、親戚や知人に嫌われて生活に困った時、華山の道士(道教の僧)に出会って3度も現金による援助を受け、富貴な身になります。その恩義に報いようと杜子春が道士に協力を申し出たところ、「これから起こる事は幻覚だから、何があっても黙っていなさい」と言われ、怪物などに襲われても沈黙を貫き、最後は地獄へ連れ込まれます。

地獄で美女に転生させられた後にも口をきかなかったため、怒った夫に自分の子供を殺された杜子春は、思わず声を出したために幻術は破れ、仙人の修行は台無しになります。愛情を捨て切れなかったばかりに道士への恩返しに失敗した杜子春は現世で暮らしつつも、約束を破ったことを恥じて悔いたのでした。

3ページ目 愛情か約束か…芥川小説で大幅に変わった物語の結末

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