江戸時代は平和な時代が250年以上も続いたことから、旅は命懸けで行うものでは無くなり、気軽に楽しむことができるようになりました。また、参勤交代や巡礼などの旅も多くなった時代です。
そうした社会で、人々を相手とした宿泊を扱った商売が様々なスタイルで発展を遂げました。ここでは、江戸期における宿泊施設を紹介していきます。
参勤交代を陰から支えた本陣とは
本陣は宿泊施設として営業しているのではなく、地元の有力者が所有する邸宅を提供して用意されるもので、時には宿役人の問屋が使われることもありました。本陣は、庶民には縁のない、まさにやんごとなき方々の為の宿舎でした。
江戸時代の大規模な“旅”と言えば何と言っても、映画『超高速!参勤交代』でも取り扱われた参勤交代です。一年おきに領地と江戸とを行き来する藩主ご一行が利用したのが、武家や公家の御用である本陣です。
自分の持ち家に殿様をお泊めできるのだから、本陣を拝命した人々は一世一代の名誉とばかりに張り切りました。しかし、支払われる謝礼が相応では無かったり、名字帯刀の特権など実利を伴わぬものだったため、経営は大変だったとも言われています。