織田信長をはじめ、数々の権力者が截香(※)してきた香木・蘭奢待(らんじゃたい)。現代も奈良の正倉院で保管されています。
(※)せっこう。香木を切り取って香りを聞く儀式。特に貴重な香木については、権力を味わう目的がある。
一体どんな香りがするのか、そもそもどこからやって来たのか……私たち一般庶民にとっては無縁の存在でしたが、今回の最新調査でその謎が解明されました。
今回はそんな蘭奢待の謎に迫ってみたいと思います。
※合わせて読みたい:
織田信長も虜にした伝説の香木「蘭奢待」(らんじゃたい)はなぜそこまで特別視されていたのか?
「蘭奢待(らんじゃたい)」——さて、この不思議な響きを持つ名前の正体、皆さんはご存じでしょうか?[caption id="attachment_251982" align="aligncent…
蘭奢待の基本データを確認
まずは蘭奢待について、基本データをまとめておきましょう。
- 香木の種類:不詳(ジンチョウゲ科アクイラリア属・同科ギリノプス属)
- 命名の由来:東大寺という漢字を隠した、言葉遊び
- 命名の理由:東大寺に火をつけるのは縁起が悪いため、もじった
- 史料の初見:『新札往来』貞治6年(1367年)
- 生育地域:東南アジア(インドシナ半島)の山岳地帯(ラオス?ベトナム?)
- 生育時期:8世紀後半~9世紀後半(西暦750~900年ごろ)
- 採取時期:宝亀3年(772年)~元慶9年(885年)ごろ
- 香り部位:材内師部(二次成長時に生じる内部組織)の損傷部から沈香が生成
- 主な成分:3-フェニルプロピオン酸
- 香り成分:ラブダナムなど
- 截香箇所:38ヶ所
- 截香回数:約50回(同じ個所を繰り返し切り取り)
- 主な截香者:足利義満(室町3代将軍)・足利義教(同6代将軍)・足利義政(同8代将軍)・織田信長・明治天皇など
沈香(じんこう)とはジンチョウゲ科の樹木が傷ついた際に生成された樹脂を指し、沈香という名前の樹木がある訳ではありません。また、すべての原木が香りを発する訳でもないようです。
またインドシナ半島産の沈香をシャム沈香(シャムはタイ王国の別称)、インドネシア産の沈香をタニ沈香(パタニ王朝に由来)と呼び、それぞれ香りに個性があります(シャム沈香は甘め、タニ沈香は苦め)。
