祇園祭・神輿洗と「鴨川の神様」、そして川床の関係

Japaaan編集部

7月いっぱい続く祇園祭では、神輿洗なる神事が行われます。7月10日と7月28日の2回、ちょうど宵山や山鉾巡行を挟み込む形で。山鉾巡行の日の夜に、氏子町を巡幸する神輿を、鴨川の水で清めるというものです。

知名度はもう一つですが、神社側はこの神事に重要視してます。特に10日の神輿洗では、鷺舞や小町踊りの女の子たちをメインに「お迎え提灯」なる行列が、繁華街を巡行。その賑わいぶりは、さながら祭り本番のようです。また、神輿の通り道を清めるため、四条通の真ん中を「道しらべ」の大松明が火の粉を散らして、行進。そのワイルドなビジュアルにも、人気があります。


神輿は3基ありますが、そのうち清めるのは、八坂神社の主祭神・素戔嗚尊が乗る「中御座」のみ。あとの2基は境内で待機です。疑問が沸くかも知れません。何故、1基しか洗わないのか、と。10日も28日も同じやり方で「洗」は行われますが、それも疑問かも知れません。何故、巡幸が終わったあとでも洗うのか、と。キレイ好きなのか、と。キレイ好きなら何故1基しか洗わないのかと。

神輿洗の儀式は、基本、鴨川の水を榊で「ぱっぱっ」と神輿にかけるだけです。どうにもこうにも「洗」には見えないこの「ぱっぱっ」、実は「洗」ではなく、鴨川の神様を神輿に迎えてるという考え方があります。


今でこそ「はんなり」した川と思われてる鴨川ですが、昔は「もののけ」の白河院でさえ手を焼いた暴れ川。しょっちゅう水害・伝染病・死体を撒き散らす、恐怖の源でもありました。昔の人は、何とか鴨川の神様に機嫌良くなってもらおうと、祇園祭へ招待することにしたのではないか、と。神に敬意を表す意味で、主祭神の中御座が出迎えにいくのではないか、と。10日の「ぱっぱっ」でお出迎え、28日の「ぱっぱっ」で川へ帰っていただくのではないかと。

「鴨川の神様」の考え方は、鴨川の夏の風物詩である川床にも関係してます。江戸期の川床は、2回の神輿洗の間しか営業が認められてなかったそうです。鴨川の神様が「お留守」なので、ちょっとくらい宴席を設けてもよかろう、というところでしょうか。そもそも川床自体が、神輿洗見物から生まれたとも言われてます。現在では5月の始め、それこそ「寒っ」という頃から営業してますけどね。

この記事の画像一覧

シェアする

モバイルバージョンを終了