みなさんの家にはお庭はありますか?お庭がある人にとって、大きな悩みの種となるのが「雑草」「草むしり」ではないでしょうか。特に春から夏にかけては、暖かい気温や太陽の光を浴びて草がどんどんと伸びていきますよね。
実は、『万葉集』にもそんな夏の草に何かをたとえて詠まれた歌があります。はるか昔の人々も、私たちと似たような想いを抱いていたんだ、と感じられるかもしれません。
『万葉集』について
『万葉集』は現存する日本最古の和歌集です。奈良時代の終わりごろに成立したと考えられています。7世紀前半から天平宝字3年(759)までの約130年間の長歌・短歌・旋頭歌・仏足石歌・などの約4,500首の歌が収められています。
全20巻からなります。天皇や貴族といった身分の高い人々だけでなく、農民など一般の人々の歌も収められていることが特徴です。
噂も草もどんどん伸びていく
夏草に関するものとして、まずはじめにご紹介する歌は、巻10・1983番の歌です。
原文
「人言(ひとごと)は 夏野の草のしげくとも 妹(いも)とわれとし 携(たづさ)はり寝ば」
人言とは、「人の噂」、携はるは「手をつなぐ」という意味です。寝ばは「寝る」の未然形で、「ば」は仮定条件を表し、「寝たとしたら」という意味になります。
現代語訳
「人の噂は夏の草のように繁くはびこっても、それでも私は彼女と手と手を取って寝られればそれで良い」
といったところ。噂だけがどんどんと広がり、現実と噂との差は大きく、有りもしない話が勝手に一人歩きしてしまっている様子が伝わるようですね。