天正10年(1582年)3月11日、甲斐国天目山(山梨県甲州市)で武田勝頼(演:眞栄田郷敦)・武田信勝(のぶかつ)父子が自害。ここに戦国最強と謳われた武田一族は滅亡しました(甲州征伐)。
甲斐・信濃・駿河の三国を掌中に収めた織田信長(演:岡田准一)は論功行賞を実施。甲州征伐において抜群の戦功を上げた徳川家康(演:松本潤)に対して駿河一国を与えます。
駿河と言えば、元は家康が人質時代を過ごした今川義元(演:野村萬斎)の本拠地。その嫡男・今川氏真(演:溝端淳平)は駿河を追われ、紆余曲折あって家康の下に保護されていました。
氏真に駿河国を返してやりたい。そう思った家康は、信長にその旨を申し出たのですが……。
何の能も用もなき氏真にあたへ給はんならば……
……十九日には右府父子軍功の諸将士に勧賞行はるゝとて。 徳川殿今度神速に駿州の城々責取給ふ。その功軽からずとて。駿河一国進らせらる。(烈祖織田殿に対し。今川氏真は父義元より好みあり。駿河はかの家の本領なり。幸に氏真いま浜松に寓居すれば。駿河を氏真にあたへかの家再興せしめんかと仰ければ。信長きかれ。何の能も用もなき氏真にあたへ給はんならば。我にかへしたまへとて気色以の外なれば。やむ事を得ず御みづからの御領となされしといふ。)……
※『東照宮御実紀』巻三 天正十年「家康収攬甲州人心」
「徳川殿、こたびの武田征伐において駿河の城々を攻め落とした武功は大したものだ。よって、駿河一国を進(まい)らせよう」
「ははあ。ありがたき仕合せ……ところで」
「何じゃ、いかがした」