いきなり討手を命じられたら、君はどうする?武士道バイブル『葉隠』が伝える奉公の心構え

もしあなたが武士だとして、謀叛人を討つよう主君から命じられたらどうしますか?(拒否や辞退はできないものとします)

まずは家に帰って可能な限りの手勢をまとめ、武装を整える……たぶん多くの方が(もちろん筆者も)そうするでしょうが、それでは武士として不覚悟なのだそうです。

「え?そんなこと言ったって、人数も武装も……」

整っていない時点で不覚悟であり、整っていないがための任務失敗ひいては死を避けようとする時点で不覚悟とのこと。

江戸時代の武士道バイブル『葉隠(はがくれ。葉隠聞書)』にはこのように書かれています。

何方へ参り居り候とも……

一八 討手など仰せ付けられ候時の事 何方へ参り居り候とも宿許へ帰らず、一足も跡へ帰らず、直に立ち向ふべし。平日御用と申し来り候時も同然なり。されば、武士は前廉の覚悟、嗜み入るべき事なり。

※『葉隠聞書』第十一巻

【意訳】討手などを命じられた時は、たとえどこにいようが家や宿舎へは戻らず、ためらいなく直ちに向かうべきである。平素の御用を仰せつかった時も同様である。武士たる者は平素からこうした覚悟を決めておくべきである。

……主君とてバカではありません。あなたに討手を命じたのは、あなたなら討てると見込んでのこと。

だから今から行きなさい。任務達成に必要ならば、主君はあなたに加勢をつけるでしょう。また、あなたの家にいる一族郎党はあなたが出発したと知れば、後からついて来る筈です。

もしついて来ないようなら、そして主君に加勢をつけてもらえないようなら、あなたはそこまでの人物ということ。日ごろ信望を築かなかった己の不覚悟を悔やみながら、一人敵中で斬り死にして下さい。

あるいはたった一人でも相手をことごとく討ち果たせばよいのです。別に数が少ないからといって必ず負ける訳でもなし、策を練るなり道中で仲間を集めるなり、出来ることがいくらかはあるはずです。

そうした諸々を総動員して生き延び、かつ任務をまっとうすることこそ常在戦場(じょうざいせんじょう。常に戦場に在り)の覚悟が試される絶好の機会と言えるでしょう。

武士として生きる以上、いつでもどこでも戦場≒死に場所である。その心構えなくして、主君に忠義をまっとうなど出来ないのです。

3ページ目 ……とは言うものの。

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