時は戦国、日本の全国各地に割拠していた群雄たちが、天下獲りを狙って激しい戦いを繰り広げていた……と言うのは後世のイメージ。
実際には天下への野望どころか、ほとんどの者が食うに困って、日々の食い物やわずかな土地を奪い合っていたのです(気候変動により、低温と長雨の影響で慢性的な食糧不足に陥っていたとの説も)。
とは言え、織田信長(おだ のぶなが)のように広く天下へ目を向けて、覇道を突き進む者も少なからずいたことでしょう。
今回はそんな一人・奥州の「独眼竜」こと伊達政宗(だて まさむね)のエピソードを紹介。
天下を獲ったら何がしたい?このスケールの大きな問いに、若き英雄はこんな答えを出したのでした。
人取橋の陣中にて
時は天正13年(1586年)11月17日。伊達の家督を継いで間もない政宗(19歳)が、佐竹氏ら連合軍との戦さ(人取橋の合戦)に臨んでいました。
「のぅ、左衛門よ」
「いかがされた」
政宗は、後見人の鬼庭綱元(おににわ つなもと。左衛門)にこんなことを尋ねます。