「鎌倉殿の13人」一度戦となれば、一切容赦はしない。第35回放送「苦い盃」振り返り

京都で北条政範(演:中川翼)が急死、その真相が執権の座を狙う平賀朝雅(演:山中崇)による毒殺だと訴えた畠山重保(演:杉田雷麟)。

しかし保身を図る朝雅はりく(演:宮沢りえ。牧の方)に畠山一族を讒訴。同調した北条時政(演:坂東彌十郎)は源実朝(演:柿澤勇人)を騙し、畠山討伐の下文に花押を書かせてしまいました。

一方その頃、何としてでも戦を回避するべく畠山重忠(演:中川大志)と語り合う北条義時(演:小栗旬)。しかし。

重忠「鎌倉のためとは便利な言葉だが、本当にそうなのだろうか。本当に鎌倉のためを思うなら、あなたが戦う相手は」
義時「それ以上は」
重忠「あなたは、わかっている」
義時「それ以上は……」

北条(私情)と畠山(道義)の板挟みになって苦しむ義時が果たしてどちらをとったのか、それはお察し(史実)の通りです。

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第35回放送は「苦い盃」。サブタイトルの意味するところは意によらぬ結婚で酌み交わした源実朝の盃と、京都で毒殺された北条政範の盃、そして重忠との最後となる義時の盃だったのでしょう。

やはり「畠山重忠の乱」は避けられないのか……実に胸の苦しい展開が続きますが、今週も振り返っていこうと思います。

目次

  1. 和歌に目覚める実朝、歩き巫女の予言
  2. 殺られる前に……りくの狂気と時政の決断
  3. 見抜かれてしまった“のえ”の本性
  4. 義時の呷る「苦い盃」
  5. 次週・第36回放送「武士の鑑」

和歌に目覚める実朝、歩き巫女の予言

前回、政子(演:小池栄子)が贈ってくれた和歌集の中から、特にお気に入りの一首を見つけた実朝。

道すがら 富士の煙も 分かざりき
晴るる間もなき 空の景色に

【意訳】道すがら、富士山から噴き上げる煙も分からないほどずっと曇っていた。

その作者を訊くと、亡き父・源頼朝(演:大泉洋)とのこと。劇中ではかつて富士の巻狩りで詠んだと紹介されていましたが、この和歌が収録された『新古今和歌集(巻第十・羇旅歌975)』によれば上洛の道中に詠んだのこと。

都育ちはダテじゃない!『新古今和歌集』に載った源頼朝の和歌を紹介【鎌倉殿の13人】

鎌倉殿として坂東武者たちをまとめ上げた源頼朝。源氏の棟梁として文武両道を兼ね備えていたことはもちろん、和歌にも造詣がありました。平治の乱に敗れ、伊豆へ流される14歳まで京都で育っている頼朝。幼…

ずっと曇り空の道中……兄が非業の死を遂げていきなり鎌倉殿に祭り上げられ、訳も分からぬ内に結婚までさせられてしまう実朝の心情に深く響いたことでしょう。

果たして都から迎えた千世(演:加藤小夏。坊門姫)と婚儀も済ませ、相変わらず浮かない日々の中で癒しを求めて和田義盛(演:横田栄司)の館へ。

鍋たっぷりの茸は、義盛の狩りが失敗に終わったことと、のえ(演:菊池凛子)から押しつけられたことを意味しているのでしょう。ちょっと義盛も不機嫌そうでしたね。

「食い終わったら、面白いところへ……」

連れて行かれたのは、歩き巫女(演:大竹しのぶ)の占い小屋。歩き巫女とは各地を放浪しながら祈祷やお祓い、託宣(神のお告げを伝えること)に勧進(寺社のため寄付を募ること)などを生業としていました。

果たして一ヶ月身体を洗っていない義盛、前世の因縁で双六が苦手な北条泰時(演:坂口健太郎)を見抜き、そして実朝に「雪の日は出歩くな」と警告を発します。

「お前の悩みは、どんなものであれお前独りの悩みではない。遥か昔から同じことを悩んできた者がいることを忘れるな。この先も同じことを悩む者たちがいることを」

歩き巫女の言葉に感涙する実朝。時代を超えて悩みや生き方を共有できる可能性を、和歌に見出したようです。

それはよかったのですが、無断の夜遊びによって御家人たちは大騒ぎ。鎌倉殿の姿が見えず、教育係の三善康信(演:小林隆)らは頭を抱えてしまいます。

やがて帰ってきた実朝に時政が迫り、下文の花押を書かせますが……掌に隠された下には畠山を討伐する旨が記されていたのでしょう。

社会人であれば「契約内容もわからずにサイン(花押)などできるか!」と突っぱねたでしょうが、何せ実朝は13歳の少年。おじじ様の勢いに押されて同意してしまったものと思われます。

4ページ目 殺られる前に……りくの狂気と時政の決断

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