中国の銅銭をモデルにした富本銭
有名な「和同開珎(わどうかいちん)」は日本で最初の通貨と言われていますが、実はその前にも使われたと思われる「富本銭(ふほんせん)」というものもあります。この内容を少し整理してみましょう。
富本銭は、日本の最古の通貨と言われる和同開珎よりも前に存在した銭貨です。奈良県や長野県、群馬県などの遺跡から発見されました。
特に、奈良県の飛鳥池遺跡からは鋳型などが出土しており、富本銭の鋳造場所と考えられています。
富本銭は唐の銅銭である「開元通宝」を手本にして作られたと考えられ、形状もよく似ています。
その形状は円形で、中央に四角い穴、上下に分かれた「富本」の文字があり、左右にはそれぞれ7つの星が描かれています。この星は陰陽五行思想の陰と陽、そして七曜を表現したもので、中国の伝統的な思想を反映したデザインであるようです。
また円形と四角い穴は天地万物の調和が取れた状態を示していて、このようなデザインは後の貨幣である和同開珎にも受け継がれています。
そして富本銭の名称は「国を富ませる本が貨幣である」という中国の古典の内容に由来しているようです。