父の仇討ちを装い、源頼朝(演:大泉洋)の命を狙う……曽我十郎祐成(演:田邊和也)と曽我五郎時致(演:田中俊介)の真意を知らず、五郎の烏帽子親である北条時政(演:坂東彌十郎)は曽我兄弟に協力してしまいます。
これを知った北条義時(演:小栗旬)はいかにして頼朝を守るのか、御家人たちの思惑が交錯する中、富士の巻狩りそして仇討ちの日が近づくのでした。
さて、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第23回放送は「狩りと獲物」。サブタイトルは富士の巻狩りと曽我兄弟による仇討ちを表しています。獲物というのは鹿か、頼朝か……。
今回も『吾妻鏡』における記述をたどり、大河ドラマの予習としていきましょう。
万寿を次の鎌倉殿として披露する一大セレモニー
時は建久4年(1193年)5月2日、頼朝は北条時政らに狩場の下見や宿所の手配をするよう派遣しました。
建久四年五月大二日丁夘。北條殿下向駿河國給。是爲覽狩倉。可令赴彼國給。御旅舘已下事。仰伊豆駿河兩州御家人等。狩野介相共可令沙汰給之由。含御旨。先以首途給云々。
※『吾妻鏡』建久4年(1193年)5月2日条
もろもろ段取りが済んだのか、5月8日に頼朝が出発。そこには多くの御家人たちが随行します。
建久四年五月大八日癸酉。將軍家爲覽富士野藍澤夏狩。令赴駿河國給。江間殿。上総介。伊豆守。小山左衛門尉。同五郎。同七郎。里見冠者。佐貫四郎大夫。畠山二郎。三浦介。同平六兵衛尉。千葉太郎。三浦十郎左衛門尉。下河邊庄司。稲毛三郎。和田左衛門尉。榛谷四郎。淺沼二郎。工藤左衛門尉。土屋兵衛尉。梶原平三。同源太左衛門尉。同平二。同三郎兵衛尉。同刑部丞。同兵衛尉。糟谷藤太兵衛尉。岡部三郎。土岐三郎。宍戸四郎。波多野五郎。河村三郎。加藤太。同藤次。愛甲三郎。海野小太郎。藤澤二郎。望月三郎。小野寺太郎。市河別當。沼田太郎。工藤庄司。同小次郎。祢津二郎。中野小太郎。佐々木三郎。同五郎。澁谷庄司。小笠原次郎。武田五郎等候御共。其外爲射手輩之群參不可勝計云々。
※『吾妻鏡』建久4年(1193年)5月8日条
随行したのは以下のメンバー。狩りは長期にわたるので、後から入れ替わっていることも(めんどくさければ読み飛ばしても大丈夫です。一応、現時点で大河ドラマに登場している者のみ太字)。
北条義時、足利義兼、小山朝政(演:中村敦)、長沼宗政(朝政の弟)、結城朝光(同)、里見義成、佐貫広綱、畠山重忠(演:中川大志)、三浦義澄(演:佐藤B作)、三浦義村(演:山本耕史)、千葉胤正(常胤の子)、三浦義連(義澄の末弟)、下河辺行平、稲毛重成(演:村上誠基)、和田義盛(演:横田栄司)、榛谷重朝、浅沼広綱、工藤祐経(演:坪倉由幸)、土屋義清、梶原景時(演:中村獅童)、梶原景季(演:柾木玲弥)、梶原景高(景時の次男)、梶原景茂(景時の三男)、梶原朝景(景時の弟)、梶原景定(朝景の子)、糟谷有季、岡部三郎、土岐三郎、宍戸家政、秦野義景、河村義秀、加藤光員、加藤景廉(光員の弟)、愛甲季隆、海野幸氏(演:加部亜門)、藤沢清親、望月重隆、小野寺直綱、市河行房、沼田太郎、工藤景光、工藤行光(景光の子)、禰津宗直、中野助光、佐々木盛綱(演:増田和也)、佐々木義清(盛綱の弟)、渋谷重国、小笠原長清、武田信光(武田信義の子)……。
せっかくなのでズラリと並べてみました。他にも大勢が随行したとのことで、まさに一大セレモニーと言えるでしょう。
万寿(演:金子大地。源頼家)を次の鎌倉殿として御家人たちに披露したい頼朝の情熱が伝わってくるようです。
さて、5月15日に富士の狩場へ到着しましたが、この日は殺生を慎むために狩りはせず、一日宴会。近隣の遊女たちも書き入れ時とばかりにやってきました。
建久四年五月大十五日庚辰。藍澤御狩。事終入御富士野御旅舘。當南面立五間假屋。御家人同連檐。狩野介者參會路次。北條殿者豫被參候其所。令献駄餉給。今日者依爲齋日無御狩。終日御酒宴也。手越黄瀬河已下近邊遊女令群參。列候御前。而召里見冠者義成。向後可爲遊君別當。只今即彼等群集。頗物忩也。相率于傍。撰置藝能者。可随召之由被仰付云々。其後遊女事等至訴論等。義成一向執申之云々。
※『吾妻鏡』建久4年(1193年)5月15日条
あまりのどんちゃん騒ぎにさすがの頼朝も辟易したのか、里見冠者義成(さとみ かじゃよしなり)に遊女たちの取り締まりを命じます。
「鎌倉殿のお目にとまれば、御台所は無理でも側女くらいにはなれるかも」
「それよりも万寿様の方がいいんじゃないかしら」
「だったらなおのこと、鎌倉殿のお近づきにならなくちゃ」
……遊女たちは、そんな野心を燃やしていたのかも知れませんね。