物事のなりゆきや成否について、よく「運がいい、悪い」などと言うことがあります。
「運よく成功できた」「運悪く失敗してしまった」などなど。しかし大抵の場合、運なんていうのは後づけで、成功すれば運がいい、失敗すれば運が悪いと思うもの。
つまり運は結果と連動しており、ならばあらかじめ「運がいい」という前提を用意できれば、結果がついてくる可能性が高まりそうです。
いわゆる「ジンクス」や「占い」がそれで、試験や試合などの前にカツ(勝つ)カレーを食べたり、神社仏閣でお守りを買ったりなどした方も多いのではないでしょうか。
かつて戦国武将たちも御家の命運を賭けた戦さを前に、占いや験(ゲン)担ぎを行っており、今回は織田信長(おだ のぶなが)のエピソードを紹介したいと思います。
決戦前、コイントスで勝敗を占う
ある時、信長が少数の兵で10倍の敵に臨まねばならないことがありました(資料には言及がないものの、桶狭間の戦いと推測)。
さて、出陣を前に信長は戦さの勝敗を占うため、主だった者たちを一堂に集めて言いました。
「よく聞け。これからこの銭を投げて天意を問う。裏が出たならば我らの敗北は必定、どこへ逃げ出そうと罪には問わぬ。しかし表が出たならば、天佑神助は我らのもの、必ずや勝利を収めるであろう」
まさに乾坤一擲、家臣たちの視線が信長の手に集まる中、銭は放られくるくると舞い……出たのは表の面でした。
「表だ!」「表だ!」
「天は我らに味方しておる、この戦さ、我らが勝利間違いなしじゃ!」
「「「おおぅ……っ!」」」