オオクニヌシが祀られる出雲大社
『古事記』はさまざまな読み方ができるテキストです。神話としても読めますし、古代日本の権力者が権威の正当性を裏付けるために書いた、極めて政治戦略性の高い本とも読めます。
あるいは精神分析の観点から読んでも面白いですし、この神話が後世の日本文化に与えた影響に思いを馳せることもできます。
今回は、そんな『古事記』の神話に登場する「国譲り」神話と、出雲大社との関わりがテーマになります。
『古事記』を読んでいくと、神代で「神の誕生」「国産み」「国造り」「国譲り」という順序で進みます。これは、一度読んだことがある方ならご存じでしょう。
このうち「国造り」の神はオオクニヌシです。オオクニヌシは、イザナギ・イザナミ神が産んだ国土・葦原中国を統治していました。
こちらの記事も合わせてどうぞ負けても死んでもへこたれない!出雲の神・大国主命の冒険は波乱万丈
さて、アマテラス神はこの葦原中国を自分の子孫に受け継がせるため、国土を奪おうと画策します。その話が「国譲り神話」です。
アマテラス神の画策はことごとく失敗するのですが、最後はタケミカヅチ神を遣わして勝利を収めました。
敗北したオオクニヌシは、「高天原に届くような壮大な宮殿に自分を祀る」ことを条件に国譲りを承知します。その宮殿が現在の「出雲大社」であると言われています。
どこまで実際にあった出来事をベースとしているのかは分かりませんが、オオクニヌシにあたる人物は実在していたと思われます。おそらく、出雲地方に存在した大勢力の親分がモデルになっているのでしょう。
実際、出雲の近辺には「荒神谷(こうじんだに)遺跡」という古代遺跡があり、そこからは大量の武器兵器が出土しています。古代日本において、出雲のあたり一帯に大きな勢力があったことは間違いないようです。