ちょっと洒落たお店の軒先なんかでたまに見かける、ちょこんと盛られた白い三角錐……そう、盛り塩(もりしおorじお)ですね。
美しく整えられたシルエットは不思議と見ていて飽きませんが、アレにはどんな意味があるのでしょうか。あるいは、単なる飾りなのでしょうか。
今回はそんな盛り塩の由来を紹介したいと思います。
清らかさの象徴として
日本人にとって、塩は昔から祓い清める意味を持っていました。塩は海水から採れるもので、その海は母親にも喩えられる通り、生命を生み出し、やがて還っていく神聖な場所とされたためです。
古くは日本神話の時代、黄泉国(よみのくに、冥界)から生還した伊邪那岐命(イザナギノミコト)が死のケガレ(穢)を祓い清めるため、海水で禊祓(みそぎはらい。心身を洗い清めること)をしています。
また身近なところでは、神道の大祓(おおはらえ)として半年に一度、人間の身体についてしまったケガレを海へ流し、それを清めてもらっていますね(水に流す、の語源とも言われています)。
他にもお葬式から帰って来た時など、自分や家族に塩をかけて心身を清めますが、あれは死者の霊が家まで入って来ないように(神道であれば死のケガレを)祓うためにしているのです。
あと、最近はあまり見ませんが、嫌な訪問者を追い返した後に「塩をまいておけ!」などと言うのは、やはり嫌なヤツによって穢されてしまった空間を、再び清めるため。
ところで、盛り塩が三角錐になっているのは、単に盛り上げた時のバランスが最も安定しているのもそうでしょうし、合わせて神様が降り立ち、依り代とする柱を象(かたど)っていると考えられます(そこで神様は一柱、二柱……と数えます)。
神様が降り立つ場所であれば、当然そこは清らかでなくてはなりませんし、清浄を象徴する塩で作られていれば間違いないでしょう。
清らかな塩で盛られた安定感抜群の三角錐。盛り塩はそこが清らかな場所であり、最高の状態でお客様を迎える意思表示のツールとして、現代も人々に愛され続けています。