口は禍のもと?江戸時代の武士道バイブル『葉隠』が教える”物言いの肝要”とは?

古来「病は口より入り、禍は口より出ずる」とはよく言ったもので、人間、要らぬものを口にして病気になったり、要らんことを口にして信用を失ったりするのはよくある話しです。

前者であれば我が身一つ苦しむばかりですが、後者に至っては他人様に迷惑をかけたり、傷つけてしまったりすることも少なくありません。

(もちろん、病気であっても重篤であれば看護や葬儀など、迷惑をかけてしまうこともありますが……)

そんな失態は今も昔も変わらぬようで、江戸時代の武士道バイブルとして知られる『葉隠(はがくれ。葉隠聞書)』にも、このような教訓が書いてありました。

物言ひの肝要は……

一二五 物言ひの肝要は言はざる事なり。言はずして済ますべしと思へば、一言もいはずして済むものなり。言はで叶はざる事を、言葉寡く道理よく聞え候様云ふべきなり。むさと口を利き、恥を顕はし、見限るゝ事多きなりと。

※『葉隠』巻第十一より

物を言う時、最も理想的なのは何も言わないことです。

「何のこっちゃ?」と思われるかもしれませんが、言わずにすむならそれに越したことはなく、言わないなら言わないで、大抵のことはどうにかなるもの。

逆に言えば、日ごろ私たちがどれだけ無駄口を叩いて無用の誤解を招き、それがトラブルの火種となっているか、ということでもあります。

2ページ目 重い価値を持つ言葉がその価値を失ってしまう

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