神社でお参りする際には、参道の脇や社殿脇に、中央に水盤と柄杓が置かれている四方吹き放しの建物をご覧になられることも多いと思います。この建物を「てみずや」または「ちょうずや」等と呼び、「手水舎」と書きます。
参拝者は、最初にこの手水舎で手と口を清めるのが基本的な作法の1つです。なぜ手と口を清めるのかというと、日本の神様は穢れを嫌うとされているからです。外国の神様も清浄を好まれますが、日本の神様はとりわけ穢れを忌み嫌います。
ですので、かつて神社でお参りをする際は、海水や川などに全身を浸して身を清める「禊(みそぎ)」をしてから参拝するのが常でした。
禊のことは、『古事記』にも書かれていて、それによれば、初めて禊を行ったのは、イザナギであるとされています。
イザナギは一緒に国生み・神生みを行った妃のイザナミを生き返らせようと黄泉の国(死者の国)へ迎えに行きますが、すでに黄泉の国の住人となったイザナミの姿を見てショックを受け、地上へと逃げ帰ります。
そして、黄泉の国で穢れた体を清めるために禊をしました。『古事記』によれば、この時左の眼からアマテラス、右の眼からツクヨミ、鼻からスサノオが生まれたと伝えます。
今でもそういう禊が必要な神社は残っていて、例えば島全体が宗像大社の沖津宮の境内となっている沖ノ島は、一般の方は原則上陸することが禁止されていますが、神事などで関係者などが上陸するときも、上陸する前に浜で禊をしなければなりません。
しかし、すべての神社の近くに海や川があるわけではありませんし、地元の神社にちょっと参拝するごとに毎回裸になって身を清めるには時間もかかりすぎて、なかなか大変です。
そこで禊の簡易バージョンとして、手水舎が登場しました。こうして参拝者は、参拝前に手水舎で手と口を清めることで、本来の禊に代えるようなシステムになっていったのです。