いきなりですが漢字クイズです。これ、読めますか?
「無悪善」
「子子子子子子子子子子子子」
むあくぜん?こここここここ……?ではありません。これは平安時代に作られたそうですが、いったい何と読むのでしょうか?
頭が良すぎて、いつも一言多かった小野篁
ある日のこと、内裏(だいり。皇居)にこんな高札が立てられていました。
「無悪善」
報告を受けた嵯峨(さが。第52代)天皇は、いったい誰がこんなことをしたのか、そして書かれた三文字にはどのような意味があるのか、不思議でなりません。
「これはいったい何と書いてあるのだ?」
博識な学者たちに訊ねてみても、このような用語は過去の典籍に例がなかったのか、誰も答えられずにいました。
そこへやって来たのが小野篁(おのの たかむら)。若きインテリ(※)として高名ながら、一言多い性格だったようで、今回も要らんことを口走ってしまいます。
(※)嵯峨天皇の在位と小野篁の生没年を参照し、このエピソードを在位中とするなら、篁何歳ごろと考えられる旨を補足。
「こんなの簡単ですよ……『悪さが無ければ善い』でしょ?」
これは単純に「悪くなければ善い」という意味に加えて「悪・嵯峨・なければよい≒悪い嵯峨天皇なんていなければ≒死ねばいいのに」と意味にも解釈できてしまいます。
(篁、そなたは何と余計なことを……っ!)
学者たちは嵯峨天皇の勘気をこうむらぬよう、あえて読めないフリをしていたのに、空気が読めない篁はつい口にしてしまったのでした。