過ちに対する意見を聞き入れてもらうには?武士道のバイブル『葉隠』が示した人間関係のコツ

古来「良言、耳に逆らう」などと言うとおり、過ちに対する諫言や意見というものは、言われる側にしてみれば自分を否定されたような気がして受け入れにくいのが人情です。

一方、言う側にしても相手が受け入れにくいのを承知で言うので気が重いばかりか、時にはかえって過ちをエスカレートさせてしまうこともあるため、細心の注意を要します。

例えば「課長と来たら、いくら『あのプロジェクトは見込みがない』と言っても聞く耳もってくれないんだから……」とか、あるいは「ウチの子、反抗期でどんなに叱っても一向に直らなくて……」など。

そんな悩みは江戸時代の武士たちも変わらなかったようで、武士道のバイブルと言われる『葉隠(はがくれ。葉隠聞書)』には、一つの答えが書いてありました。

今回はそんな人間関係のコツを紹介したいと思います。

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付け焼刃の意見より、日ごろからのコミュニケーションが大切

十四 諫言意見など悪事の出来(いでき)てよりしてはその験(げん)あり兼ね、却つて悪名をひろげ申す様なるものなり。病気出来てより薬を用ふるが如し。兼養生(かねようじょう)をよくすれば、終(つい)に病気出でず。病気出てより養生するよりは、兼養生は手間も入(い)らず、仕(し)よきものなり。未だ悪事思ひ立たざる前に、兼々心持になる事を何となく諫言意見仕り候(そうら)はば、兼養生の如くなるべき候由。
※『葉隠』第二巻より。

【意訳】
諫言や意見というものは、いざ悪事が起きてからしても効果がないばかりか、かえって悪化しがちなもので、病気になってから薬を飲むようなものである。

それよりはむしろ予防(※)に努めるべきで、日ごろからコミュニケーションをとって、悪事を諫めるような意見を伝えておく方が、手間もかからず効果的である。
(※)兼養生とは、予(かね)てより養生しておく、つまり予防を意味します。

2ページ目 日ごろから信頼関係を築いておくこと

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